意味をあたえる

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悪口

自部署のパソコンの数が少ないのでたまに隣室の営業所に行って仕事をする。こっちは暖房がよくきいていて居心地が良い。私の事務所はエアコンがついていても寒いことが多いので私はよく「寒い」と言う。いつも風量は「弱」になっているから誰もいないときに「急」にしてみたが変わらなかった。詐欺ではないかと思う。しかし聞いたら建物はもう十年以上経っているし夏場には冷房がきかないエアコンもある。だから仕方ないのかもしれない。しかしそれでは営業所のほうがぬくぬくしている理由がわからない。上着を着てネックウォーマーまでして私はバカ丸出しの南極観測隊のようであった。私は寒がりなのであった。


ここ数日は集中を要する作業だったから私は集中ししょっちゅう点をあおいだり目の間を人差し指でつまんだりしていたら栄養ドリンクをもらった。「もらいものですが」とのことだった。その日は比較的おとなしかったが今日になると悪口大会が始まった。お局ポジションが休みだったから残りの人たちが彼女のシフト表を見ながらやんややんや言っていた。私はそれを見て死体を蹴り飛ばす行為を連想した。もちろん生身も蹴っているのだがお局は所長とも結託しているから一筋縄ではいかないようだ。切実だが気楽にも思えた。


いくつか勤めた場所のひとつで面接の時に「気の強い女の人が多いが大丈夫か」と確認されたことがある。それは派遣の面接だったから私の採用はほぼ決まりだったが私は律儀に「いわゆるお局的な人と仕事もしたことがあるので大丈夫です」と頼もしい返事をした。私は結局そこを半年くらいで辞めるがそれはお局とは関係なかったから私の言葉は嘘ではなかった。単純に女性が多く女性の百貨店みたいな部署だった。人前でオナラをするのから婚約を破棄されるのまで揃っていた。二児の母の一見優しそうなひょろっとした女がいちばん怖いらしく実質的なボスだった。婚約破棄は見るからに怖くいつも他部署のフラッテリー・ママみたいな女とフロア中を練り歩いていた。私はそれらとはあまり関わらなかったから単に運が良かっただけかもしれない。きつかったのが隣の女でデータのチェックをお願いしたら「大丈夫でした」とメールを送ってきて「それくらい言えよ」と思った。何時間かおきにデスクに薬剤をふりかけて雑巾で拭いていて私はまともじゃないと思った。あと隣の畑だったがちょうど私の目線の先の席の女が日に日にやつれていって見ていて痛々しかった。隣がサーファーみたいなイケメンだったがその部署は徹夜がざらでやはりまともでなかった。