子供の運動会を見に行っていつも不思議なのは親が必死になって自分の子の姿を写真や映像におさめようとする姿だ。そう言うと「いえ私はそんなに必死じゃありません」と否定する人がいそうで結局は必死な人ばかりが目に付くからみんなそうだと錯覚するという話である。なんにせよ私と妻は観覧ゾーンのいちばん端にシートを敷いたらそこは通路のすぐそばなので近道を試みる児童によってシートは踏まれた。そのうち前述の子供の姿をカメラにおさめようとする親にも踏まれた。ところでカメラには三脚というものが付随するが以前父に聞いたら世には一脚というものがあるらしい。そんな唐傘オバケみたいなのが何の役に立つのかと訊いたらシャッターを押すときに生じる手ぶれを軽減するには三脚よりも一脚がいいということを教えられた。昔父が運動会に行くと杉浦が一脚を使って自分の子を写真におさめていて父の中では一脚といえば杉浦というイメージが根付いた。杉浦と言われても誰だかわからないが私の家のほうは杉浦という名字が多かった。私の一年上には杉浦の双子がいた。あまり特徴のない顔立ちだったがジオン軍のような顔立ちをしていた。
それが今年になったら3人くらい一脚を使っている人を見て最初は年寄りだったからこれが杉浦かと感慨を深めたがそのあとも何人も杉浦を見るハメになった。