意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

ゴージャス

休みだったので10時半まで寝ていた。一度5時半に起きて子供の支度を手伝った後に寝たから二度寝であった。妻に起こされるまで一割くらいは意識を残したような極めて集中を要する眠りに没頭していた。私は二度寝をすると金縛りの夢を見るから二度寝をおそれているのである。しかし朝は肌寒いし眠いから寝た。外から定期的に金属音が鳴っていて夢か区別がつかないが現実だった。その音について私は叔父の整備工場にある車を持ち上げるリフトが立てる音に似ていると思いしかしその金属音は執拗にずっと鳴り響くからどこまでの高さまで持ち上げているのか怖くなった。音はたまに止んだがすぐに再開した。あとで外を見ると職人が金属の杭を打ち込んでいる音だった。隣の隣の家が改築だか解体をするための境界を作っていたのである。その家はわけありの家で私がこの地区に住みだしたころはゴミ屋敷で父子が二人で暮らしているという話でそのうちに裏の竹藪に鷺のような白い大型の鳥がたくさん住み始め周囲の糞害が尋常でなくなり義父などが
「タイヤを燃やせ」
などと言っていた。とにかく自宅をゴミ屋敷にするくらいだから傍目を気にして積極的に鳥を追い払うわけでもなく周りの声にも耳を傾けない。人の家だから下手に手を出せないが結局は行政の力を借りたんだかでみんなで竹をぜんぶ切って追い払った。私の車もずいぶん糞まみれになった。車体に対して斜めに糞がひっかけられそこから鳥が飛んでった方向を推測することができた。鳥の騒動からいくらもしないうちに父子が死んだと聞かされた。私は義父に理由を聞いたが「知らない」と言われそれが何かを隠すという風でなくまるで関心がないという風でありこの地区では特に理由もなく突如人が死ぬことはよくあることだと感じられた。考えたら奇妙なことは他にもありそれは私の読解力や私自身の関心の薄さから発生するかもしれなかったがやたらと日当たりの悪い家に住んでいる一家も奇妙だった。


妻と神社に行った。Googleによると私は2016年の2月5日にもそこを訪れておりそのときは子供が受験だからお参りに来て今回は妻の御朱印集めにつき合わされた形だ。妻が御朱印を待っている間に私は「なんとかの神木」のつくる影のところに突っ立っていてすると三歳か四歳の男の子が
「ママー」
と呼ぶので私は道をあけた。私があけた方角には神社の柄杓で手を洗うコーナーがあってそこに金色のスカートを履いてひらひらとした熱帯魚みたいな上着の女がいて彼女が母親だと思った。私はその女を見て「人妻もののAVに出てきそうな格好だな」と思った。ところがその女は母親ではなく男の子は神木をくるりと回って絵馬のコーナーへ行きそこにいたいかにもみすぼらしい女が母親だった。女は人妻とは対照的に肌は浅黒くぴちっとした緑のTシャツにジーンズのスカートを履き爬虫類のようだった。私はこの世が階級社会であることを実感しその後ラーメンを食べた。途中で銀行に寄り子供の授業料を振り込む妻を後ろで待ちながら自動ドアが勝手に開かない立ち位置を工夫した。