意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

終わりに向かって

熱海に行ったら廃墟があって興味があるのは私だけなので他の人たちがお土産を見ている間に見に行った。正確には廃墟ではなく解体中の建物である。元はホテルだろうかはがれかかったタイルがむき出しになりかつて誰かがそこで熱い湯を浴びていたんだろうと想像する。真ん中に階段がありああいう解体作業は階段は最後に壊すのだろうか。スプレーで何か目印がしてある。街中に溶け込んで地元の人がその前を自転車で通り過ぎる。間に柵があって「私有地」と紙が貼られている。柵があるから私は道を挟んだ向こうから見た。熱海と言えば私のイメージでは「ファミレスの前で直角に曲がる国道」である。まるでファミレスを建てるために国道を迂回させたような形になっている。しかし観光地でどこにでもあるようなファミレスが流行るのか? と思ったが私が最初に見たのはもう20年くらい前だから採算はとれるのだろう。地元の人からしたらサザエやカサゴよりハンバーグのほうがありがたいということは容易に想像できるし若い人は魚を毛嫌いということも多い。大学のときのサークルで山中湖に行ったときにみんなが昼にマックが食いたいといい出したが部長だけがほうとうを食うべきだと主張し私は部長と仲良かったから私もほうとうを食べたが私も別にマックでも良かった。私が部長と仲が良かったのは住んでいる自治体が同じで一緒に帰ったりしていたら自然と仲良くなった。


今日はそのあと初島に行ったら船酔いをしてひどい目にあった。吐きそうになるより先に手足がしびれて視界が曇って要するに貧血になって倒れそうだった。デッキではしゃぐ大学生のグループが鬱陶しくて仕方がなかった。島が早く近づいて大きくなってくれないかとひたすら凝視した。港がどこだかわからずひょっとして裏側だったら尚この時間がつづくのかと暗い気持ちになった。島について船を降りたらいくらか良くなったがそれでも近くの小屋でしばらくうずくまっていた。帰りもまた船に乗ることを考えるといっそここに住んでしまおうかと思った。通り沿いに大きな石があってそこに「青色申告宣言の町」とあったから私も青色申告をしようと思う。青と白の違いは専従者控除だったかとにかく家族を従業員にしたときの給料は白の場合は上限があったが青はない。青天井の青なのである。


ところで船に乗る前の駐車場で街灯の土台のコンクリートの上に印鑑(シヤチハタ)が落ちていて何という名前かと思って蓋を開けたら口紅だった。大変紛らわしい。