私の住む自治体は10年くらい前に田んぼの真ん中にショッピングモールができて以来駅などはさびれていく一方だ。今日久しぶりに駅に来てそうかんじた。久しぶりと言っても半年は経っていないと思うがいつもは電車に乗ってどこかへ向かうからあまりそんなことを考えない。今日は市役所でやる商工祭に行くために駅の東口に駐車場を探したが埋まっていて西口に行ったら運良くあいていたのでそこに停めた。そして東口のほうへ行くために駅の改札前を通ったのだ。駅の本屋はすでにつぶれていてシャッターが下ろされたままだ。券売機も昔の半分になった気がするが妻に訊いたら昔からこの数だというから気のせいかもしれない。駅前のイトーヨーカドーもプライスになったりしたが結局更地だ。隣にあったしまむらは震災のあとすでに更地になっている。更地になったあとは駐車場になることが多い。私が若いころはこんなに駐車場はなかった。スーパーマーケットの駐車場は管理がガバガバで別目的でそこに停めても何を咎められることもなかった。夜も開けっ放しになっていた。それがいつからか警備員が詰めるようになって戻ってくるときに何を買ったか報告しなければならなくなった。仕方がないから靴下などを買ってそれを見せた。夜も入り口に鎖がかけられるようになった。窮屈になったと思った。
駐輪場はもっとひどくて市営のは無料だが誰も乗らないものが打ち捨てられたり逆に盗まれることが多かった。たまに放置自転車を片付けることがあったが私のものが持って行かれてしまうことがあった。そういえば2度か3度そこでなくした気がする。朝停めたはずの自転車が見つからなくて私はどんな気持ちになったのか。あまり気にせず歩いて帰ったのかもしれない。そういえば昔は家に何台も自転車があったから一台二台なくなってもあまり気にしなかったのだ。そのうち国道の陸橋の下に放置自転車を一時的に保管する場所があってそこからハガキが届いて取りに行った。行きは父に送ってもらってそこから自転車に乗って帰った。20分くらいで家に帰れた。そのころは自転車がいちばん便利な乗り物だと思っていた。
商工祭は市役所の駐車場でやっていて駐車場の端には小さな遊具のコーナーがあってそこの半分埋まったタイヤに腰かけて休んでいたら鉄棒で女の子が3人空中逆上がりをびゅんびゅん決めていて私はそれに見とれた。脚が細くて長い女の子たちでそのそばにずんぐりした女の子が突っ立っていた。ずんぐりした女の子は妹もずんぐりしていて私は
(これじゃただの逆上がりも難しいな)
と思っていたらそのうち父親がやってきて父親はストライプのワイシャツを肘までまくった伊達男でどこかで見たことのある男だった。私の見間違いでなければ私より3歳くらい上で昔何度か遊んだことがありそのうち一度は私が酔い潰されさらに一度は駐車場で切り返しをしたら
「一発で入れろや」
と文句を言われて私はむっとした。その数度以来まったく会わなくなったが彼も結婚したと風の噂で聞いた。私の前をすぎた人はだいぶ白髪も増えていた。