意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

途中式(31)

2014年に突然社長が交代すると事態が変わりやたらとコンサルタントの人が出入りするようになった 私たちの作業場は相変わらずほっとかれたままだったが(誰かがそれを「ツンボ桟敷」と呼んだ)各事務所の整理整頓が行き届いているかを見回っているらしくたまにブロック統括が避難してきたりした ブロック統括がくると必ず近づいていくのが日比野さんで日比野さんは統括が帰るタイミングで近づいていって駐車場で何かを話すのだった 私は駐車場に面した部屋で昼を食べていたからその様子をよく見ることができた 日比野さんなりの防衛策だったのだろう


対するT所長は新社長に取り入ることに成功したのかあるとき日比野さんは本社に呼び出され結局そのまま帰ってくることはなかった その日の朝スーツを着た日比野さんを見たのが最後であった 私はスーツ姿の日比野さんを見るのは初めてだった 日比野さんも着慣れていないのは明らかで肩のあたりのサイズが合っていなかった
「ちょっと本社に呼ばれちゃいまして」
と私に告げたが日比野さんとしてもかんじるところはあったのだろう 本社は東京にあるが直行を認めないのがいかにもT所長らしかった その余波なのか日比野さんがいなくなってすぐに三谷さんも降格した