妻が図書館へ寄ってほしいと言うから向かった 車のタイヤを替えた帰りである 街中の行ったことのない図書館なので気が乗らなかった 妻は後部座席で横になった 新しいタイヤの心地を確かめるのではなく体調が悪かったのである ゲスの極みを聞かせたせいかもしれない 「ベッキーの件がなければもっと売れたのかもしれないのにね」とか「米津玄師のほうがいいね」とか勝手なことを言った 米津玄師は知らないが真面目な歌を歌うだけなら正直何を聞いても同じ気がする 妻はゲスの極みの歌詞がいいのか曲がいいのかしつこく訊くので「ふざけたところがいい」と答えた
結局図書館も私が行くことになり返却期限のすぎた本を返すのではなく借り直すことまでしなければいけなかった 行ったことのないよその図書館なのである 車を停められるのかもわからない 地下へ降りて車を停め案内に従って進むと扉があり古めかしい手書きのフォントで「しずかにあける」と貼り紙がしてある そういえば地下へのスロープを降りる間もしつこいくらい貼り紙がしてあった それも手書きだ 公共施設とは往々にして時代に取り残されるのである カウンターの女性も早口で何を言っているのかわからない コンクリートの国のアリスという海外の小説を思い出した そんなものないが