意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

愛しているから忘れてほしい

なんとなくノルウェイの森を読み始めた 恋をしているからである しかし恋とはもっと切実なものだった気がする ノルウェイの森は昔好きな人に貸した 「ノルウェイの話なのかと思ったらちがった」と言われた ビートルズなんて知らないのである 好きな人に貸した話は今書きながら思い出した 暑い夏の出来事だった 白い柵の前で待ち合わせ場所まで自転車で行った


「文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶や不完全な想いでしかない」というのはまったくその通りである 書く行為は最初から足を踏み外す


第一章の最後で直子が自分を忘れないでほしい旨をワタナベに伝えるがワタナベはドイツの空港でつまり直子は自分を愛していなかったんだということに思い至る 昨日読んだときにもその理屈につまづいたし初めて読んだときもつまづいたことを思い出した どうして「忘れないで」が「愛していない」なのか 愛していたら忘れてほしいのか 「忘れないで」いることは実は簡単だ だれでも簡単に「このことは忘れずにいよう」とか思う 忘れないとは結局忘れないつもりになっているに過ぎない 忘れるとは記憶にアクセスし続けない限りそのことを認識することができない