意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

キーホルダーがほしい

ちょっと前に自転車を買った。新しい職場に移って単身赴任を始めたときに距離が2キロメートルほどだったのでそのときにも買ったのだが、そのときは通販で車輪の径の小さいおしゃれなやつを購入したがすぐに後悔した。ペダルを漕いでも漕いでもスピードが出ないため次々に後続の自転車に追い抜かれる。私の住んでいる町はとにかく自転車に乗っている主婦が多くそのほとんどが電動アシスト付きだからとてもかなわないのである。もちろん競争しているわけではないからスピードはほどほどでいいのだがアパートの駐輪場はあまざらしなのですぐにチェーンが錆び、ますます乗り心地は悪くなった。


それでも2年半乗り続けたがついに後輪がパンクしてしまった。修理も可能だったがそれなら新しいものに買い換えようと思い、近所のホームセンターへ歩いていった。私の子供の頃は自転車の相場は1万円だったがさすがにそこまで安い自転車はないと教わっていたがやはり2万円近くすると即決する気にはなれなかった。違うホームセンターも見てみようと歩き出したらたまたま自転車屋さんを見つけ、そこは昔ながらの自転車屋といったかんじで、店頭にリサイクル車というのが安く並べられていたのでそれを買った。「パンク修理とかできます?」と聞いたら当たり前だと笑われた。私ももういい年をした大人だから少しは話をしてやろうと思い、「通勤で乗りたいんです」と言ったら「駅ですか?」と訊かれ違うので「いえ、○○の方です」と会社の地名を言ったらそれ以上会話は続かなかった。


新しい自転車は信じられないくらい乗り心地が良くさすが店主が「しっかりメンテナンスしてます」と言うだけあった。店主は白髪交じりの初老の男で、ツナギを着ていて、店の中には石油ストーブが置いてあった。つまり職人風情だったのである。その職人が調整したのだから、乗り心地が悪いわけがなかった。とにかくペダルを漕いでもどこかがきしむということもなく、すいすいと進む。普通はスピードを稼ぎたくてサドルをあげるが、あまりに快適だからこのままでもいいと思ってしまう。


私はかつて子供の頃に自転車を乗り回していたことを思い出した。私の家は田舎だったので、友達と遊ぶのに自転車は必須だった。下り坂で目一杯漕いで史上最速を目指すのが常だった。今はそんなことは怖くてできない。止まれの標識を見落とすと事故を起こしかねない。