私は大学生の頃に、友人と議論をしたときに何を言っても言い返されるので黙ったら
「俺には口では勝てないよ」と
言われ、当時は論破なんて言葉はなかったが、明らかに論破された瞬間だった。私は元々論理的に話をするのが得意だったから討論とかそういうのは好きだったし今でも自論をひけらかせば「なるほどね」という雰囲気にはなる。一方でやはり論理的な話が得意な人とぶつかるとラップバトルと同じでいかに論理を途切れさせないかという雰囲気になってもはや本論も各論もなくなってしまう。例えば「あなたのAと主張していたが行動と矛盾していませんか?」という議論があったとして、相手がそれを認めたくないとなったら箸でも棒でも投げつけて応戦するのである。つまり手元に投げつけるものをたくさん用意できる人ほど勝つのである。私は箸を投げつけられたときに、「もういいや」という気になって降りてしまったのである。もちろんそれが悔しいときもあったが、少しずつ気にならなくなってきた。一方的な主張にはぱっと道をあけられるようになり、それが美徳と感じられるようにすらなってきた。
もっとも仕事となると話は変わってきて、こちらが主張することも多くある。しかしそれもこれからどんどん少なくなる。それは年上の先輩とか上司に対してのみ行うからであり。今や私が年上になってしまったからである。年上の人なら私の主張に「バカやろー」と力で押さえ込んでくるからやり取り自体が楽しかった。ずっと年上の人である。少し年上くらいだと私が言うと黙ってしまうので、そういうときは早々と店をたたんで「どうぞ」とやるようにしている。