意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

停滞の季節

新しい携帯ほしいな、と思っていてとあるショッピングモール内の携帯ショップに行ったが、そこは初めて行くところだったので、最初遠くから巨大な豆腐みたいな建物が見えてきたから、
「ああ、あれか、でかいな」
と思いつつ近づいたが、いつまでたっても入り口や駐車場の矢印が見えてくる気配がなく、逆にフェンスの途切れ目が見あたらず、ようやくそこが無関係の工場であることに思い至った。ナビがヘマしたのである。

私はナビの画面を注視しようと近くのセブンイレブンに車を入れ、エンジンをかけたまま画面を見ると「運転力診断の結果」というのがあって、私がそこをタップすると、横向の棒グラフが立っていて、
コーナリング、10点」
「ふらつき、9点」
だの評価されている。付加価値というやつである。私はなぜか加速度だけが評価は低く、
「急発進しています」
などと書かれていた。そういうのはいいから、ちゃんと案内してほしかった。

そういえば何日か前にコンビニの窓に「一万円くじ」みたいなののポスターが貼ってあって、そこに書いてあった広告文句が、
「一生分の運をつかってしまうことはありません」だの、
「使い道に困ることのない金額」だの、
「ものは取りようだな」といった文句が並び、私は好感を持った。なんだか文化祭のチラシのようだ、と思ったからである。私も昔そんな文句をいろいろ考えた気がする。文化祭つながりで、私が高校のときにお化け屋敷をやったクラスがあり、そのポスターが稲川淳二の顔が書かれたポスターで、それが素人の男子が書いたような下手くそな絵で、しかもカラーコピーが学校にはないから、下書きを白黒コピーして、そのあとみんなで手分けしてマーカーで色を塗ったものだから、それぞれ微妙に色ムラの違いがあって、どれも下手くそさを増している。私はその手作り感がすっかり気に入ってしまい、最終日に剥がされる前にこっそり一枚家に持って帰り、結婚するまで部屋に貼った。私の部屋は大変日当たりが良かったので、紙はすっかり変色した。

携帯ショップの店員はずんぐりしていて、しかも私は最初となりの小動物のような店員に声をかけたが、
「ただいま引き継ぎいたしますので」
と言い、私は単に
「乗り換えを検討していて」
と言っただけなのに、引き継ぎとはなんなのか。ちょうどお昼時間に来てしまったから、そういう引き継ぎなのか。しかし、私とずんぐりが話を始めても隣のブースでうずくまってしきりに何かを記入している。店の中は私しか客はいなかった。店員は上記の二人に加えて男性スタッフと、あともう少し年の行ったマスクをした女性が、やたら忙しそうに行ったり来たりしている。マスクの中はだいぶ蒸れていそうだ。私がずんぐりが面白いと思ったのは二点。

1、私が欲しいと言った機種をやたらと誉める。
「○○カッコいいですよねー」など。私は私自身が褒められたわけではないから嬉しくはないし、もしかしたらその機種を選ぶ私のセンスが素晴らしいと言いたいのかもしれないが、限られた数の中のひとつを選ぶだけなのだから、私と同様のセンスの持ち主はおそらく万単位でいるだろうから、それを「センスが良い」と評価するのはお門違いだ。そういうマニュアルでもあるのだろうか。

2、「なんとかな感じですか?」「(現在の私のプランとの価格差に対して)すごくないですか!?」など、全体的にフランク敬語なしゃべり方をしていたが、私が「ホニャララについて教えてください」と言うと急に真顔になって、小声でなにかをつぶやいた。彼女の胸ポケットには小型のマイクが仕込まれていて、それが裏とつながっていたようだ。そのときはちゃんとした敬語だったので、その落差がおかしかった。

帰りに不二家の前を通ったら屋根にペコちゃんとそのボーイフレンドが腰掛けていて、お尻を接着剤なのか釘なのかで固定され、気の毒に思った。