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外科医・白戸沢の(新)事件カルテシリーズ「新古今ロマンス特急連続殺人事件 ~枕詞はダイイング・メッセージ~」

去る電車――、「新古今」読む四既婚者、……死んでるさ! - 回文春秋

こちらの回文を読み、これは白戸沢医師の最新作か!? と目を輝かせていた私であったが、目さんいわく、こちらの放送は以前のと局が違うらしい。これはきっと「浅見光彦シリーズ」のように、複数のテレビ局で放送されているパターンではないか? そう思い、前回は町医者であった白戸沢だったが、今回はそれ以前の大学病院の外科医だったころの事件とした。キャストもこちらでは、小泉孝太郎に演じてもらうことにする。外科医時代はまだ父親は存命なので、白戸沢シニアを鹿賀丈史、名物看護師長役をあき竹城に演じてもらう。あき竹城は白戸沢になんとか鹿賀の跡を継いでもらおうといろいろお節介をしてきて、それが事件の思わぬヒントにつながるのである。ちなみにその後鹿賀丈史もとある事件で命を落とし、白戸沢は大学のポストを蹴って事件を解決するのである。


――新古今ロマンス特急に集まる刑事たちと白戸沢、それと関係者

神田警部(六平直政)「一体どうしたって言うんですか白戸沢先生? わざわざみんなを集めて。事件は既婚者たちの集団自殺、てことでカタはついたじゃないですか?」
若いインテリ風の刑事「(手帳を開きながら)四人の既婚者たちが握りしめていた和歌、それぞれの枕詞は一見なんの意味もありません。しかし、四人の枕詞を合わせて、さらに列車の発車時刻、経由駅を組み合わせてみると、結婚生活におけるあらゆる罵詈雑言、苦悩が浮かび上がってきました。これは政府の少子化対策への抗議も含まれている、と取っても良さそうです」
神田警部「いかにもインテリ野郎たちの考えそうなことですぜ。(ちらっと若手刑事を見やる)さんざん愛だの言っておいて、冷めたらとっととお陀仏しちまうんだから。しかし先生、これは元はと言えば、先生が解いたトリックですぜ?」
白戸沢「はい......わたしはトリックを解き、皆さんに説明しながら、ある違和感を拭いきれずにいた......。わたしは、危うく犯人の書いたシナリオに乗せられてしまうところでした」
神田警部「すると......」
白戸沢「そうです。四人は自殺ではなく、殺されたのです!!」
富沢看護師(あき竹城)「んまっ!!」
神田警部「ど、どういうことなんだ!? じゃあ、犯人はどこに!?」
白戸沢「順を追って説明させてください。まずは、四人が手に握りしめていたという新古今和歌集ですが、実は、正彦さんのものだけ、万葉集の和歌なんです。「新古今ロマンス特急」という名称から、我々は勝手に新古今和歌集の歌と思い込んでいたのです」
(さっと顔色が変わる一同)
インテリ刑事「そうか! 今は国語の授業でも、和歌が熱心に取り上げられることなんてほとんどない。ここにいるのだって、俳句と川柳の区別もつかないような人たちなんだ!」
(苦虫を噛み潰したような顔をする神田警部。彼は毎年サラリーマン川柳に応募している。)
白戸沢「なぜ正彦さんだけ万葉集なのか? そこには真犯人の止まれぬ事情があったのです。さらに、この正彦さんは、実のところ既婚者ではありません」
一同「なんだって!?」
白戸沢「そう、ですね? あやこさん?」
あやこ(中山忍)「(涙をこぼしながら)はい、わたしたちは、籍を入れていません」
神田警部「一体、どうなっているんだ......」
白戸沢「もうすぐ電車は終点に着きます。そこで、真実は明らかになるでしょう」
「(車掌(id:ankoro)のアナウンス)まもなくー終点、城ヶ崎、城ヶ崎ー。どちら様もお忘れ物の無いよう、もう一度お手周り品をご確認ください。わが恋は知るひともなしせく床の涙もらすな黄楊(つげ)の小枕。それではよい旅を」

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城ヶ崎海岸はサスペンスドラマのクライマックスでよく使われる崖である。そこで真犯人との最後の対決が行われるのである。おそらく正彦の手の中の万葉集
の歌の枕詞に、犯人の手がかりが隠されているのである。犯人に殺される直前に、正彦は歌をすり替えたのである。そして残りの和歌からも、正彦とあやこの、ただの男と女の関係を超えた、「血の絆」とも言える結びつきが浮き上がるのである。2人は15年前の、ある事件をきっかけに、出会ったのである。

原作者には、車掌のアナウンスとして登場してもらった。声だけでは誰なのか気づく人は少ないと思われるが、どっこい目氏の独特の節回しといつまでも場馴れしないたどたどしい喋りで、ファンはすぐに彼だと見抜いてしまうのである。

車掌が引用する和歌は、式子内親王の歌で、今読んでいる福永武彦「忘却の河(新潮文庫)」に出てくるものを引用した。福永武彦は目さんから教えてもらった作家で、目さんは私のIDをそう読んでいるらしい。その著書の中に新古今集の歌が出てくるのはものすごい偶然だ。ちなみに「黄楊の」は、「告げ」との掛け言葉らしく、これも事件と深い関わりがありそうである。

以前の白戸沢医師の事件簿はこちら。

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