意味をあたえる

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初日は必ず起きられる理由

寒いから、俺は寒がりだからもう布団にくるまって本を読んでいると、やがて眠くなる。別にこのまま寝て悪い理由はないのだから、目をつぶり出すと、窓の外の滝のような雨の音が聞こえてきて、そういえば雨戸を閉めていない。先週の台風のときは閉めた。別に閉めなくてもいいやー、と俺は思う。しかし、後から妻が上がってきたら、閉めると言い出すのかもしれない。そうしたら、寝たふりをしよう。妻は雨戸を閉めるときに、隙間を少しだけ開け、光が差し込むようにして、ずっと暗いと寝坊をしてしまう心配があるからだ。

しかし、台風がきたら、窓をぶち破ってしまう可能性だってある。もしそれが真夜中の、俺たちが寝ている時間だとして、そんな大変なことが起きれば、間違いなく起きると思うが、例えば吹き込む風の音がなにか違う音だと勝手に思い込んだり、あと夢だとよくあるのが、「これは俺の担当ではない」ということを、勝手に判断してしまうことだ。この前久しぶりに、目覚ましの音を、これは関係ない音だ、と勝手に思い込んでいて、なかなか起き出すことはできなかった。それが寝坊だ。しかし、こういうことは新学期とか、初めて会社に行く日とかだと、まず起こらない。それは俺だけだろうか?

寝ていても音は聞こえるし、目も見える。フロイトラカンか忘れたけど、心理学の本のなかで、子供を失った父親がお通夜で棺桶のそばに寄り添っているが、つい居眠りをしてしまう。不意に棺桶の上のロウソクが倒れ、棺桶が燃え出す。すると父親の夢に息子が現れて、
「お父さん、熱いよう」
と泣ながら悲鳴を上げ、目が覚めると、棺桶が燃えていて、慌てて火を消す。

このエピソードは、父親に迫った危険を、息子が夢に出てきて救ってくれる、あるいは息子は本当に熱かったから、どうにか父親に助けてもらいたかった、という解釈をしがちだけど、実はそうではなく、父親の「火が迫っているけど、眠っていたい」という欲求を正当化するために息子を夢に登場させた、という解釈が正しいそうだ。つまり父親は眠りながらも、燃えている棺桶が見えているのである。これは俺の記憶による紹介だから、細部は間違っているかもしれないので、興味のある人は読んだりしてみてください。

つまり寝坊についても同じで、目覚ましの音が聞こえないというのはありえなくて、起きさせないために、目覚ましの音は何か別のものにすり替えられている。

ところで俺はなぜ、窓が割れたときに、自分が起きられないことを心配するのだろうか? いざというときに父親らしく振る舞えるか不安なのである。もっと言えば、振る舞いたくなんかないのだ。