それで美しいまとうか鈴木が、玄海師範と戦うのですが、私の記憶が確かなら玄海はもうそのときは自分の力を浦飯に託していたので抜け殻状態で、鈴木にバカにされ、まあそれはいいとして、とにかく美しいまとうか鈴木の顔は道化で、スローガンは
「1000の顔と技を持つ、美しいまとうか鈴木!」
だった。999だったかも。鈴木は仮面をかぶっているから、それだけたくさんの顔を所持できるのだ。それで、手始めになんか技を繰り出し、玄海師範は崩れた壁の瓦礫まみれになるのだが、それを鈴木は勘違いをして、もう倒したと思い込む。そして次のセリフ
「もう終わりか!? せっかく残り999(または998)の技を見せてやろうと思ったのに!」
と言い放つのである。ところで、このコマが書かれているすぐ下のコマの外に小さい可愛らしい字で、
「ムチャ言うな」
と突っ込まれている。確かに1000個も技を繰り出すなんて、やる方も見る方も疲れる。もうこれが私にはツボで、今書きながらもちょっとニヤついてしまった。欄外だから、これは作者のセリフである。だから、私は美しいまとうか鈴木が好きと言うよりも、冨樫が好きなのだ。
冨樫は幽遊白書のころは、割とコマの外にちょこちょこ文字を書いていることがあり、上記以外では、「ソ連クーデター勃発」と、ソビエト崩壊の様子が書かれていたのが印象深く、これは原稿を書いていたときのリアルタイムの出来事だとわかる。
ところでまだ時間があるからタイトルにも触れるが、YUKIの2人のストーリーという歌を最近聞いていたら、不意に山崎ナオコーラの「人のセックスを笑うな」を思い出した。歌の歌詞の中、サビの前で「古着のスカートをたくし上げ、云々」みたいなのがあり、それが、山崎ナオコーラのその小説はラブストーリーなのだが、まあもう関係が終わりに差し掛かったころ、男の主人公が女の股を開こうとすると、股には力が入っていて、あかない。男が
「ダメ?」と聞くと、女は、
「いいよ」と言って開いてくれる。それまで結構やりまくっているから、ニュアンスがこれだけでは伝わらないけど、なんか切ないシーンなのである。
一方最近「三月の五日間」という小説を読み、その中では渋谷のラブホテルでセックスをしまくり、男の足の付け根が痛くなって平手でぱちんぱちん、と叩く話だった。これは切なくはないが、こっちの下半身も気だるくなる。