友達と妻と遠くへ出かけた。遠くとは高速に乗って出かける地域である。最初私の車には友達2人と妻が乗る予定だったが前日に突然
「俺も行くよ」
とひとりが言ってきて、この人はもともと行く予定の人ではなかったから、私の車には私以外に四人が乗ることになった。これでは大変ガソリンを食うと思ったから最初の人を拾ったらガソリンを満タンにし、タイヤの空気圧をチェックした。空気を入れていたら妻が「最近知らないおじさんに「空気の入れ方が違うよ」と注意された」と言ってきた。妻はブザーが鳴ったら注入口から空気入れを離すと思っていたが、実は鳴らなくなるまで入れるのが本当のルールだった。最初にどの圧になるまで入れるとか設定するから、入れすぎる心配はなかった。しかも最近の機械には「End」と表示されるからそこまで入れれば良かった。そういうことは機械の本体のステッカーに書いてあるから、
「説明を読めばいい」
と私は言った。妻は注意書きとかあまり読まない女だった。
空気を入れ終わると私たちは最後の友達を迎えに行った。
「黄色いポリバケツの二つあるところを右」
と言われたが、ポリバケツはひとつも見つからなかった。近づくとやがてわかったが、私が思っていた物よりもずっと小さい、私からするとただのバケツのように見えた。近づくほど小さくなるものは珍しい。坂を登り友達の家があった。初めて行く場所であった。だから私たちはポリバケツを目印にしなければならなかった。3月から住んでいる。一軒家である。電話をすると小窓がぴしゃっと閉まり、織田信長みたいだな、と思った。日本の歴史かなにかの漫画で、織田信長がトイレの小窓から斎藤道山の行列を眺める場面が描かれていた。やがて家から出てきて坂を下り、高速道路を目指した。
「ここが東京都杉並区ならなあ」
と私は突拍子のないことを言ってみた。
「飛び地?」
と、友達。私は飛び地という語感が気に入った。
「そうすればここは東京都最北端ということになる」
サービスエリアに行くと青い車の友達が先に出てきて、私の方からひとり移動してもらおうと思うが、天井の低いクーペだったので無理そうだった。私の車の窮屈さの方がまだマシであった。私たちは立ち話をしたが、そのころから顔がひりひりした。友達は私の顔が赤いのを見て、前日どこか遊びにいったのかと思った。その後神社へ行っておみくじをやったら中吉が出た。