意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

途中式(2)

エスというのはサエキという名の女性で所長に限らずみんな疎んじていた だいいち話が長いのである エスはやがて結婚して子供を産むが結婚するまで誰も結婚するとは思っていなかった 桶川にマンションを買ったとき誰もがこのまま独身を貫くのだろうと直感した 緑の日産マーチの助手席には大きな蛙の人型のぬいぐるみが鎮座してシートベルトがしめられており尻の穴から彼女が生まれたときと同じ重さの砂が詰められているとのもっぱらの噂だった 私も弁当を手提げに入れて助手席におくがたまにシートベルトのアラームが鳴るからシートベルトを締めようかと思った 手提げはミスタードーナツのオマケで貰ったピングーの柄のやつでピングーは絵だからとうぜん尻の穴から砂は入らない 体躯の上にローマ字で「MOTTAINAI」と書かれていて私はわざとMOTTAのぶぶんで区切って読んでモッタというキャラの不在に想いを馳せるのであった(モッタ・イナイ)


桶川のエスのマンションは20階建てで周りは田んぼだったので塔のように遠くから見えた 私はそれを馴染みの塔と呼んだ 馴染みを塔を少し行くとラウンドワンがあった


そのエスが結婚して身ごもると冷房の温度を24度にしてそれに伴ってT所長は作業場にやってこなくなってやがてT所長は定年を迎えてそのまま嘱託となった 嘱託になると私たちの作業場にきた 今度は涼むのではなくじっさいにそこで作業する一員になったのだ