意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

オタサーの姫

妙に馴れ馴れしい女が乗ってきた バスである 6時半に会社を出れて私は機嫌がよかった 女はトイレットペーパーを手に持ちながらバスを持っていてバスが到着する直前にそれを落とした そのせいでバスの発車が遅れ女は乗客にしきりに「すみません」と頭を下げた 過剰に謝る人は地雷である 女の他に三人くらいの男が乗ってきた みんなバラバラに座った 他にもいたらしくバスの窓から手を振っていた 私は最初彼らの格好を見て「登山でも行ってきたのかしら」と思った 蛍光色のウィンドブレーカーを肩に羽織っていたからである 


女の前には男が座っていて女が妙に馴れ馴れしいのが目についた 恋人同士なのかと思ったがだとしたら狭くても隣同士に座るのではないか 男も女も2人掛けの席にひとりで座っていた 私もそうだった 比較的空いていた車内なのである 女は最初前の席に乗り出すように喋っていたが次第に男に対するボディタッチが増えてきてやたらと顎をさするようになった 顎が好きなのか酔っているのである 身なりは普通で白いフリルのついたシャツに髪は茶髪で後ろでまとめている 髪の乱れ具合から1日がかりの行軍であったことが伺える 一度だけ目が合うと彼女がかなりぱっちりした二重であることが認められた


だんだんと私はこれがいわゆるオタサーの姫なのかと思えてきた だとしたら貴重なものを目にした 男はみんな楽しそうで何より 


あとそのすぐ後ろにめちゃくちゃフリックの早い女が高速でラインをやってて驚いた 片手で文字を打ちまくるので親指の筋肉がすごそうと思った