意味をあたえる

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暗室

私の実家には暗室があって父はそこで写真の現像をしていた。白黒専門である。暗室はその名の通り完全な闇であり、幼いころは特に恐ろしい場所でもあった。私の実家は当時は平屋で大した広さもないからどの部屋も完全に馴染みであったが暗室だけは未踏であった。一度だけ父と一緒にその部屋で過ごしたことがあるが見たことのない脚立や机があって独特のにおいがして自分の家でないような気がした。


またその部屋はいつも窓が開いていて風が強いと吹き込んだ風がドアを激しく揺らした。あまりにその音が不気味なので母に相談したら隙間に新聞紙を挟んでくれた。まだペーパーレスの時代ではないからいらない紙はいくらでもあった。そんなときは父も不在で尚更心細かった。父の仕事は泊まりのときもあった。泊まらないときもいつも帰りが遅く布団を並べても一緒に床につくことは滅多になかった。私はどちらかと言えば一緒に寝るよりも父が隣の今で起きていてくれる方が安心できた。壁越しに聞こえるテレビの音でくつろいでいる父の姿を想像しながら眠りについた。


今日は風がとても強かったので上記のようなことを思い出した。家に帰っても部屋がぜんぜん暖まらないので寝るしか方法がない。