意味をあたえる

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帽子をこねる、風邪を引いたような味

今朝ネモちゃんとEテレを見ていたら、シャキーンという番組で「帽子をこねる」と言っていて、それは実際にそういう慣用句があるかどうかは別として、一種の言葉遊びみたいなコーナーだから、そんな慣用句はない。

しかし、私の中で引っかかるものがあり、それは慣用句としての「帽子をこねる」ではなく、実際にこねる帽子とかあったら面白そう、と思ったわけで、例えば男物の上着でも襟やフードのところに針金が入っていて、立体的な形にして、ファッションを楽しむことができる。あれはあの時の流行りだったのだろうか? 買う上着の3回に1回はそんなのだった気がする。襟のところに針金が入っていて、それは柄の入ったシャツだったが私はあまりこねくり回したら、そのうちに布を突き破ってしまうんじゃないかと心配になったが、案外丈夫だった。針金じゃないのかもしれない。そういうのを帽子にも応用して、しかし書きながらもう実際にありそうな気がしてきたが、もっと自由度を与えるために、粘土みたいな材質にして、それこそこねくりまわして、思い思いのかたちにできることにする。だから、店頭で売られる時にはビニールに入ったなんか布っぽいもののかたまりで、ぱっと見帽子には全く見えない。それで、あるとき情報番組にとりあげられたりして、
「これ、なんだと思います?」
と女性レポーターが手にとって、クイズになったりする。私は情報番組と書いて、なぜか「なるほど・ザ・ワールド」を思い浮かべてしまい、若い人は知らないだろうけど、結構面白かった。しかし「なにが?」と聞かれると、たまにナレーターがドラゴンボールの悟空がやっていた、くらいのことしか思い浮かばない。それで、愛川欽也が順番に解答席を回って行って、解答席は確かその日の成績の良い順に、左から並び、傾斜がつけられている。その日のペケは堺まちゃあきと薬丸のコンビで、2人の番になると、薬丸も当時は若いから、
「ボクね、これなんだか知ってますよ」
と腕組みをしながら、胸を張る。当時はまだ「ドヤ顔」なんて言葉はなかったから、こんな風に描写するしかないのだ。しかしそうやって各席に回って答えを聞いていくのは愛川欽也ばかりで、相棒の楠田エリコが司会席にとどまるのはなぜだろう? 実は当時はまだ携帯バッテリーが今ほど進化してなくて、楠田エリコが末席まで行ってしまうと、帰りの傾斜を登れなくなってしまうのだ。そう考えると楠田エリコは他の番組でも司会席に座ってばかりで、あまり動くことはない。あれはバッテリーの節約なのかも。しかしながら私は当時はまだ小学生だったから、家の決まりで9時までしか起きられなかったから、そんなには見なかった。

それから、朝ネモちゃんを送っていくと、ネモちゃんは今度の休みのリンゴ狩りを楽しみにしているが、すこし風邪気味である。私は少し脅してやろうと思い、
「風邪を引いていると、風邪がリンゴに伝染るから、風邪が治らなければ、りんご園には入れない」
と言って、私の左手をゲートに見たて、ネモちゃんの胸の前でそれを勢い良く下ろした。私たちはいつも班の中では一番乗りで、だいたい交通安全のおじさんも近くにいるのだが、今日はゴミ捨て場に来ていた元区長のおじさんと話し込んでいたから、私も少しはふざけたことが言えたのである。私は機械式のゲートになったつもりで、りんご園も随分と進化したものだ、とか思った。
「リンゴが風邪を引くのか?」
「リンゴが風邪を引いたら風邪を引いたような味になる」
するとネモちゃんは、風邪を引いたような味とはないか? と質問をしてきたが、もしかしたら私がデタラメを言ってるんじゃないかと疑っているのだが、私の父親は実際、
「これは風邪を引いたような味だ」
と言っていた気がする。ぼけた味だ、だったかも。でも私の記憶にはあるから、
「ぼろぼろの味」
「スカスカの味」
など言ってみるが、どれも的外れで、言葉を接いでみるほど、実際からどんどん遠ざかる。