営業所の所長が半年くらい前に定年退職してそのまま嘱託になったがその前はずいぶんイヤミだとか言われた 真夏の暑い時期に部屋にやってきたと思ったら急にワイシャツの首元に指を突っ込んで前後に煽るような動きを始め「ここは涼しいなあ」なんて言ってきた 温度が低すぎやしませんかというジェスチャーなのである 細かいことにうるさいタイプだったがそのエピソードをいちいち思い出すこともできないが「ヤな奴」という印象だけは残っている いつも脈絡なくきついことを言ってくるので心を許すことができなかった 機嫌良く言い寄ってくるときは何か頼みごとをするときに限られた
それが定年を迎えたとたん胸のつかえがとれたみたいに急に穏やかになってしまった 小言が全くなくなり仕事の話をふっても「俺は関係ない」みたいな反応しかしなくなってしまった これがいわゆる「立場が人格をつくる」なのかと感動をおぼえた しかしだとしたら彼の人格とは一体なんなのだろう 「立場が人格をつくる」は私の父も昔よく言っていてその世代の頃に流行った考え方なのだろう リーダーシップを育てるためにまず器から入るというやり方と分析する 役職が絶対なのである
一方でそれは年功序列とセットのやり方だったと思う 今は年下の上司というのも普通にいて私のところは部長が一番若い 直属の上司も私よりも下で私はいちおう敬語で話すが敬語じゃない人もいるが特に違和感もない 上の人たちはいつも忙しそうでこの前会ったときも「宿題が」なんて言っていて私は大人になるメリットのひとつは宿題がないことと思っていたから気の毒に思った 偉くなるほど仕事の負荷が上がるからフェアにかんじる 年功序列はやはり歪なシステムだし立場を利用して人格をつくるなんてどう考えてもダメな人がドーピングしているみたいなイメージがある