高田馬場に友人が住んでいるのでその友人が
「忘年会やろう」
と言うから行った。実は私は14年くらい前に高田馬場に勤めていたことがあって少し早めに着いたのでその勤め先があった場所に行ってみることにした。しかし駅の風景はあまり変わってないものの会社はどの方角にあるのかまったく忘れてしまっていて、私は最初当惑したが横断歩道を渡って坂を下って神田川の方に出たらなんとなく思い出してきた。とにかく飲食店の多いい街である。見覚えのある病院の前を通ってこの建物か、あるいはその隣かというところまではわかった。その会社はとっくの昔に消滅していてそれ以前に引っ越していた。社長は私より6歳下で彼女がいたが彼女にはパパがいて社長はそのことを普通に話していて私にはよくわからない感覚だった。社長は悪い人ではなかったがお客さんがとにかく極悪で私は3ヶ月くらいしかもたなかった。前の職場でお世話になった60代の女性に仕事を世話してくれないかと神田川のほとりで泣きながら電話をしたことを思い出した。その人は私の元同僚だが定年退職してどこかで働いていてそこに潜り込めないかと期待したのである。あまり困らせては悪いと思い最後は
「なんとかする」
と言って電話を切った。その人とはそれっきりである。
神田川のほとりを歩いたがこんなに道が狭かったっけ、と驚いた。十数年で川幅が広がったのかもしれない。会った友達に白髪が増えていた。子供がハタチになるときには還暦を迎えるという。来年に小学校に入学するらしく、どの学童に預けるか悩んでいた。私は特に感想を持たなかった。最近私の中で特に自分の意見を持たないのがブームなのである。とは言うものの、昨日は同僚に意地悪く質問をしてキレさせてしまった。それは午前中の出来事で、私はなんとなく機嫌が悪かったのである。怒ったその人は事務所の引き戸を勢い良く締め私は
「思春期かよ」
と思った。思春期はドアを破壊しがちである。