意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

途中式(9)

私が転職したのは2010年の夏でその夏に雷が鳴っていたかはわからない 仕事に慣れると帰りにコンビニでアイスを買って食べるようになった それまで2年くらいは電車通勤でまったく音楽をきかなかったが車に変わったので音楽を聞くようになった ブランキージェットシティのCDを何枚か買って聞いた


翌年に大きな地震があって建物が揺れた あわてて外に出ると外灯が大きく揺れていた 停電になったので工場長の三谷さんが車でラジオを聞いていた 運転席の窓を開け片足を地面につけていた 私はなんとなく三谷さんのそばにいたがラジオがよく聞こえないので駐車場内をぶらぶらしていた すると淀川に
「そこを離れろ」
と怒鳴られた 看板が倒れてくるというのである 淀川はもともと建築士の事務所で働いていた 淀川がいうには日本の建造物の構造計算はみんなデタラメで大地震がきたらみんな倒れてしまうとのことだった 私もR4(立川、淀川、下関川、あとひとり忘れた)も早く家に帰りたかったが三谷さんは帰ってよしとは言わなかった 三谷さんは優柔不断に定評のある男だった 係長だったが仕事が詰まってくると口をきかなくなって誰が話しかけても無視した さすがに社長が話しかけたら返事するだろうと思ったら無視をして降格させられた 地震から3年後の話である 出荷準備に忙しかったらしい マスクをしていたから返事はしたけど声が小さかった可能性もある 三谷さんは普段からぼそぼそしゃべるから私は話しかけられてもまず一度では内容が理解できなかった 私も耳が遠かった 耳が遠い人によくあることだが何度も聞き返すとだんだん面倒くさくなって聞こえたふりをしてしまう そうして相手に「で?」と訊かれて気まずくなったり行動に移したら「違う」と怒られたりしたが大人になるとほとんどそういうことはなくなった 大人になるとお互いがお互いの話を聞かなくなるからである 話が理解できないときは自分の言いたい話をすれば良かった 特に名古屋や愛知の人の話を聞くのは困難であっちの人はどうしてあんなに早口でしゃべるのか不思議である