意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

妻はだまされない

「自分は絶対にだまされないという人がもっともだまされやすい」と詐欺の番組で言っていたがそれでも私の妻は「だまされない」と言う 先週のアンビリバボーで詐欺特集をやっていたのを一緒に見ていたわけだが振り込め詐欺の再現VTRが流れると「どうしてこれで騙されるのかわからない」という そりゃ確かにお茶の間から画面で隔てられた出来事を見たら陳腐に見えるに決まっている ドラマのチャンバラで「ほらっそこっそこだってば! もう! じれったいなあ」と文句を言うのと似ている 人は自分が思った風にはなかなか動けないものである 


私の祖母のところにも振り込め詐欺の電話がかかってきたことがあったが「おかしい」と思いつつも怖くてしばらく動けなかったそうだ 倅に電話して「警察に電話しろ」と言われようやく正気にもどったらしい そういえばこの祖母は昔風呂を覗かれたこともあった 私が小学生のころだからもうおばあさんであったから私には奇妙な出来事に思えた しかしそういう趣味なのかもしれないし勘違いかもしれなかった たまたまそこに同居の倅が仕事から帰ってきて御用となった この倅の行動に危うさを感じた倅の嫁は新たに倅に生命保険をかけることにした、というオチがついた たしかに倅(叔父)は無鉄砲なところがある


アンビリバボーで面白かったのはその後「振り込め詐欺だまされたふり作戦」という警察の対策を紹介していてあるとき孫を名乗る男から大金を請求をされた女のところに警察から「良かったら逮捕に協力してくれませんか?」と電話がかかってきて女は協力することにした しかし実は警察もグルで結局女は100万円をまんまとだまし取られてしまうのである 番組のテロップは「だまされた作戦」とあったからてっきり詐欺側がギャフンと言わされるのかと思ったら実際は「だまされた作戦・作戦」でテロップでミスリードを誘っていたのである 私も騙されたふりして現金を渡してもし失敗したらお金は返ってくるのかとか変だと思ったらその辺はテレビ側の演出の甘さだろうと思い結局は騙されてしまった 妻は「電話だけで警察と思うのは浅はかだ」と依然強気であったが再現では電話の後に偽警察は被害者の元に「よろしくお願いします」と挨拶にきてそのとき手帳まで見せていてそのことを指摘しても「本物なら制服を着てくるはず」と譲ろうとしない

立場が人格をつくるなんて

営業所の所長が半年くらい前に定年退職してそのまま嘱託になったがその前はずいぶんイヤミだとか言われた 真夏の暑い時期に部屋にやってきたと思ったら急にワイシャツの首元に指を突っ込んで前後に煽るような動きを始め「ここは涼しいなあ」なんて言ってきた 温度が低すぎやしませんかというジェスチャーなのである 細かいことにうるさいタイプだったがそのエピソードをいちいち思い出すこともできないが「ヤな奴」という印象だけは残っている いつも脈絡なくきついことを言ってくるので心を許すことができなかった 機嫌良く言い寄ってくるときは何か頼みごとをするときに限られた


それが定年を迎えたとたん胸のつかえがとれたみたいに急に穏やかになってしまった 小言が全くなくなり仕事の話をふっても「俺は関係ない」みたいな反応しかしなくなってしまった これがいわゆる「立場が人格をつくる」なのかと感動をおぼえた しかしだとしたら彼の人格とは一体なんなのだろう 「立場が人格をつくる」は私の父も昔よく言っていてその世代の頃に流行った考え方なのだろう リーダーシップを育てるためにまず器から入るというやり方と分析する 役職が絶対なのである


一方でそれは年功序列とセットのやり方だったと思う 今は年下の上司というのも普通にいて私のところは部長が一番若い 直属の上司も私よりも下で私はいちおう敬語で話すが敬語じゃない人もいるが特に違和感もない 上の人たちはいつも忙しそうでこの前会ったときも「宿題が」なんて言っていて私は大人になるメリットのひとつは宿題がないことと思っていたから気の毒に思った 偉くなるほど仕事の負荷が上がるからフェアにかんじる 年功序列はやはり歪なシステムだし立場を利用して人格をつくるなんてどう考えてもダメな人がドーピングしているみたいなイメージがある

区長さんの箱

義父が「区長さんの箱」なるものを作成した そこに区長さんからの配り物をいれてもらおうというのである 区長専用のポストである 作りはいたってシンプルで魚屋さんが喜びそうな発泡スチロールの箱に側面と蓋にマジックで「区長さんの箱」と書いただけである マジックは私が提供した 普段カレンダーに仕事が休みの日に丸をつけるのに使うマジックの黒を貸した 私は青で丸をつける 妻は赤だ 赤と青が重なる日はだいたいラーメンを食べるのである 行列のできるラーメン屋というのが近所にあって妻が行きたがるのだ 妻は行列があってもなくてもひとりで食べ物屋に入れない性質なのだ 昔「私はひとりで牛丼屋にもはいれる」と自慢していた女がいたから入れない女性は多いのか もちろん私だって積極的に入れるほうではない セルフサービスが苦手だったことを以前書いたが店それぞれのシステムが把握できないと落ち着かない 食券を渡す相手を間違えたらどうしようとか思う いつか行ったカレー屋では店員がひとりもおらずまごまごしていたらそこにいた唯一の客の男が奥に向かって 
「おい! 客だよ!」
と怒鳴ってくれた そのときの声のトーンで男と店主の関係が把握できた 私は男からはいちばん遠い席についた カレーは美味しかったが店が静かすぎて落ち着かなかった 写真でもとればひとりでも不自然じゃない気がしカメラを構えかけたが馬鹿馬鹿しいからやめた

しずおか

昨日は仕事でしずおかに行った ウナギパイを買った 行きの新幹線で新入社員が隣に座った  彼が手にしていた資料を盗み見したら「新入社員研修」と書いてあったから明らかだった 社名は私もよく知るところだったので彼はエリートなのだろう 荷物のキャリーバッグのキャスターが列車の揺れであちこち行くたびにおどおどする様はいかにも頼りなかったが、来年か再来年には生まれたときから大人だったような顔をするのだろう 私は彼に話しかけたい衝動にかられたが想像するだけにとどめた 私はノートPCで少し仕事をしたが電源アダプターを持ってきていなかったのでほどほどのところで止めた 新幹線みたいな静かな乗り物でもパソコンの画面を見続けたら若干酔った 上司に頼んで私服できたが朝は雨が強くてどうでもいい服になった 雨は昼からあがる予報だったが気になったので外を見たが風景が早すぎて何もわからなかった 人も少ない

セルフの

ルフレジのことが話題になっているが確かにあれは面食らうがそこまで大事でもないように思う かつてセルフのガソリンスタンドが登場したときはどうだったのか セルフサービスの食堂で皿をかたす場所を把握するまで落ち着いてご飯を食べられなかったのはかつての私だ 私はスーパーのセルフレジはまだ単独では経験がないがレンタルビデオ屋ではここのところいつでもセルフだ 私は借りるのはいつも漫画なので先日DVDを借りたらロックを外すのができなくて焦った かなり力を入れても取れないから店員を呼んだら磁石の力を使うのだそう よく磁力と重力ってどっちが強いんですかみたいな話がでると磁石を下向きにかざすと下の釘だとかが上に引き寄せられるから磁力のほうが強いのだそう だからレンタルビデオで力いっぱいロックを外そうとしても無駄なのだ 会社の人は家でバールを使って引きはがしたことがあるそう 防犯ゲートで引っかからなかったんですかと訊いたらあのロックはそういう意味合いではないそうである


とにかく私は映画を見ないからレンタルDVDは滅多に利用しないがレンタルビデオ店の店員の「やる気ゼロ」の態度が切なくて極力セルフを利用するのである セルフができてほんとうに良かった 何年か前まで家の近所にレンタルビデオ店があったときはカウンターの上の客向けの注意書きのパネルに店側の宣言として
「私たちは私語は一切しません!」
とあって本当に最低限の会話しかない風で奥で黙々とダンボールをつぶしたりしていて見ているこっちの息がつまりそうだった 店長の名札をつけた若い男はメガネをかけていてその奥の目がまさに死んだ魚の目でいつも借りるのをもう止めてしまおうかと迷った オマケにその店舗はミニゲームコーナーが併設されていたがスロットの台の前には朝早くでもジャージにサンダル履きの男が陣取っていてそれを見るだけで滅入った 24時間営業の店だった トイレはきれいだった

家事にも対価を

道徳の授業で「お母さんの家事にもお金を払うべき」という子供の意見が「母の愛は無償」という教えにかき消された瞬間 #クロ現 - Togetter

少し前に行動経済学の本を読んで保育園のお迎えの時間を守らない保護者が多いので遅れたら罰金を払うシステムにしたら遅刻の件数は前よりも増えたという実験結果がでたという話が載っていて私の直感に反するが家事に対価をみたいな考えが浸透したら同じようになるのではないかと思った 同じの意味は実施した人の思うような結果にならないという意味での同じだ 私なりに行動経済学を解釈するとつまりお金が絡まなければ人は寛容で絡むとシビアになる よくあるのが安く請け負うとそれがスタンダードになって後の人が困る(から安くしない)みたいな考えでだから対価の発生する労働には慎重になる みんなが慎重になるというわけではなくその辺がきっちりできる人がいわゆる「お金持ち」なのだろう だから将来家事を担わない人の稼いだお金から家事労働者にお小遣いを払う慣習ができたとしてお金をけちると夕食の味を落とされたり洗濯物を後回しにされたりするのだろう 私も今朝洗濯するときに妻に「あまり洗濯機に物を詰め込まないよう注意され仕方なく自分の寝巻きを洗わないことにした 私は対価をもらおうとも思わないしよくできた夫だとも思わない 私は単に妻の家事の仕方が気にくわないからやっているだけなのである だから今日はたまたま休みでしかも朝は寒かったせいか体が重くてなかなか起きあがることができずに義母に洗濯機を先に使われやむを得ず妻の前で洗濯をしなければならなかった 普段は起きてこないうちに素早く回してしまうのである


私の子供のころはお手伝いの対価としてお小遣いをもらうというのは固く禁じられていて両親も請求した私に「わが家はそういうやり方はしない 手伝いは手伝い、小遣いは小遣いだ」と口に出して伝えた だから手伝いは本人の意思に任されていて頼まれごとを断っても怒られることはなかった 洗濯物を干しっぱなしにしても怒られなかったが雨が降ると隣の家の人が乗り込んできて気まずいので自主的に取り込むようにはした 当時はずいぶん融通のきかない親だと思ったが上記記事の家事の対価みたいな話を読むと結果的に行動すべてに金がからむみたいな考えにならなくて混乱が少なかったように思う だから母親が0円の請求書を子に出したというエピソードも単なる皮肉か冗談にしか思えない 私なら子が請求書を出してきたらそれはきっちり払って二度と頼まない旨を伝えるが揉めるからやらない

菜々緒のドラマが面白い

昨日は録画した菜々緒のドラマを見た 最初はディーン・フジオカの「モンテ・クリスト伯」を見ていたがなんだか難しくて途中で見るのをやめてしまった 去年に原作を読んだところで読んだきっかけは小島信夫の「寓話」に出てくるからであった 「モンテ・クリスト伯」はページをめくるのがもどかしいくらいだったので小島信夫のことは忘れてしまってそのまま三国志だのを読むようになってしまった モンテ・クリスト伯は主人公のダンテスが婚約者と原っぱでいちゃついている脇で悪党3人が昼間っから飲んだくれている序盤の場面がドラマでも再現されていて良かった しかし高橋克典が出てきたあたりでもういいやとなった


その点菜々緒のドラマは単純で良かった 妻が何度も「スカッと・ジャパンみたい」と言っていたがその通りだと思った 菜々緒は何をやってもスカッと・ジャパンなのだろう 非情に見えて情に厚いのである しかし話を思い出してみるとすっかすかである 主人公のセクシー・ゾーンの男の子はいてもいなくても同じである ずいぶん大きなリュックを背負って出社するが一体何を持ってきているのだろうか スーパーファミコンだろうか 子供の頃祖父母の家に遊びに行くのにそういえばリュックにスーパーファミコンを詰めて行った それを持って遊ぼうという魂胆なのである ビデオ入力端子にさえつなげば遊べるから私にとってみれば携帯ゲーム機だったのである 両親は呆れていて私も自分で「何をやっているのだろう」という気もしたがビデオ入力端子のある家に行くのならとにかくスーパーファミコンを持って行かないと気が済まない年頃だったのである 今ならばモンテ・クリスト伯をリュックに詰めて行くのだろうか あれも七冊くらいあった気がする(私は電子書籍で読んだ)