意味をあたえる

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サンタもいるし、山もある

私は小学六年までサンタさんにプレゼントをもらっていて、我が家には小さな煙突しかなかったから、サンタは玄関からやってくるから、クリスマスイブの夜はドアに鍵をかけない、という設定でやっていた。実際に鍵をかけなかったかは知らないが。

それで、やはり隣の家のお嬢さん、この人は私よりも四つとか五つ年上で、2人姉妹であるが、この人たちに、
「サンタはいない、それはあなたのお父さんとお母さんだよ」
と言われたが、私は頑なにその事実を認めなかったので、私は笑われた。お嬢さんの家は二階建てで、二階に二人の部屋はあったが、部屋はもしかしたら1人のものだったのかもしれないが、誰の部屋だったのかは知らない。とにかく私は小学校へあがった頃に二階の部屋に遊びに行ったことがあり、その部屋はカーテンが引かれていて薄暗い。ベッドのヘッドボードのそばには小さな引き出しがあり、お嬢さんはそこから手錠を取り出した。刑事ドラマで見たことのある、銀色の、本物の手錠だった。お嬢さんは私の手首と、ヘッドボードのパイプの部分を繋げようとしたので、私は
「いやだいやだいやだ」
と必死に拒否した。お嬢さんはやや焦りながら、
「これは偽物だよ」
と言っていたが、絶対に本物だった。お嬢さんの家はドアの庭がコンクリートになっていて、コンクリートは真ん中で亀裂が走っていて、隙間には蟻が巣を作っていた。黒くてとても大きなありで、顎で噛まれたら血が出そうな感じがして、私は怖くて仕方がなかった。

そんなお嬢さんに「サンタはいない」と言われても認めなかったのは、私は父親に
「サンタが存在しないというのなら、プレゼントも存在しないということだ」
と言われていたからである。私だって馬鹿ではないから、小学三年、四年になる頃には、いないのかもしれないと考えることもあったが、疑えばその時点でプレゼントは消滅してしまうのだから、疑ってはいけないし、疑うという行為は24時間いつでもできるし、また、周りに誰がいるとかは関係ないから、神様とか見ているかもしれないから、やはり真剣にその存在を信じなければいけない。私のこの信じるという行為は、私には妹と弟がいたから、その人たちに対する責任という側面もあった。

私はこんなエピソードはありふれているから、特に書くつもりはなかったが、昼間おせんぺさんの記事を読んでいたら、突然コブラのある話を思い出し、コブラとは、漫画の宇宙海賊の、左手がサイコガンのコブラのことです。

あるとき、とある雪山の頂上に大量の金塊を積んだ飛行機が墜落したという情報が入り、そこへ向かうコブラ。麓の山小屋には同じく金塊を手に入れようと何人もの盗賊たちが詰めかけていた。(ただし最初は善人のふりをしているが、コブラが見破る)

ところがこの山というのが曲者で、山の存在を信じている人にしか存在しない山で、山へ向かう一行のひとりは、早速
「俺には山が見えないんだよ!!」
と叫び、サメに喰われてしまう。山の麓には雪を泳ぐサメがいたからです。

それ以外のメンバーは無事にたどり着くのですが、ところがひとり悪い奴がいて、こいつは神父の格好をしているのですが、寝ている人の暖房を切って凍死させたり、あとメンバーが一人の時に
「本当にこの先金塊なんてあるのかな? そもそもこの山自体怪しくない?」
と惑わし、その言葉に耳を傾けたとたん、いきなり山がその人から姿を消し、山に登っていた盗賊は真っ逆様に落ちて、転落死するのである。

そうやって徐々に人数は減り、最終的にコブラと神父がのこり、結局コブラが勝つわけだが、コブラが山の存在を信じられた理由は、そもそもコブラが山を目指した理由が金塊を手に入れるということではなく、実は墜落した飛行機にはコブラの相棒のアンドロイド・レディが乗っていて、彼女を助けるために山を目指したのであった。

このお話の教訓は、サンタを信じないと言う人は、金塊を目指して山を登る人で、その山は途中で消えてしまい、命を落とすのである。