意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

自転車とトラクターはどちらが早い?

帰り道にカッコいい自転車の後ろを走る形になり、参った。私は車なのである。もちろん私自体は人間である。馬鹿馬鹿しいことを書いている、と思われるかもしれないが、この前私がいつまでもトイレから出てこないので、小学生の娘が、
「パパ、うんち?」
と訊いてきたので、私はわりと気張った調子で
「俺は人間だー!!」
と答えたら中学生の娘まで大爆笑した。私には娘が二人いるのである。

自転車の後ろを走る前は、私はコンビニに立ち寄っていて、そうしたらカッコいい車が停まっていて、車はセダンだ。外車で黒だった。ベンツとかアウディなどではなく、滅多に見ないようなメーカーのやつで、私には名前がわからない。外車ですらないかもしれない。特徴としては、ブレーキランプがだし巻き玉子のようにふっくらしている。私はずっと前にもフィットのランプが昔の近鉄バッファローズのマークに似ている、と書いたことがあるが、特にそういうのが得意というわけではない。しかし、その後に見かけた車のランプを何かに例えよう、みたいなゲームを自分で開催し、テトリス、ミジンコ、動物細胞、漢字の「入」、と例えた。そのうちに前を走るのが自転車となった。

当然自転車はのろいわけだが、私はふと、自転車とトラクターだったら、どちらがのろいか、ということを考え出した。私の住んでいる地域は田舎なので、たまにトラクターの後ろを走ることがある。トラクターを見なくても、畑から上がったトラクターのタイヤの溝から落ちた土の上を走ることもある。トラクターはどうしてそんなにのろいんだ、というくらいのろい。

私の父も農家の息子なので、実家の畑というのがあってそこでトラクターを走らせている。数年前に新しいのを購入したらしく、
「今度のは運転席が個室になっていて、冷暖房が完備だ」
と度々自慢してくる。自分で買ったわけでもないのに。私は、もうその自慢を数年聞き続けているわけだが、まだ実物を見たことがない。私が子供の頃、おばあちゃんちにあったのは、運転席がむき出しの、好意的に言えばオープンカーのようなつくりで、シートも二枚貝の片割れをひっくり返したような簡素なもので、未使用時には、それを裏返しておく。父の話だとトラクターというのはギアが二つあって、一速の二速とか三速の四速、とかあって運転が非常に猥雑らしい。私は普通免許を持っているから、一度くらいは運転したいと思ったがついにその機会はなかった。私は畑仕事とか植物とか、あまり興味がないのである。

その頃のイメージからすると、運転席が個室で冷暖房完備なんて、いったいどれだけの高級車なんだよ、と思う。ちょっと背伸びしすぎじゃないか? とも思うが、父ももう還暦をこえたので甘えられる部分は甘えてしまっていいと思う。

そんなことを考えながら、そういえばもっと昔祖父がまだ生きていたころ、農機具にトレーラーをくくりつけ、移動時はトラックのようになり、田んぼに到着すると運転部分だけ切り離してそれで耕すという機械に乗せてもらったことを思い出した。シートはベンチシートでトレーラー側にあり、私は祖父の隣に座って、ハンドルに手を置いて運転気分を味わったのだ。切り離して農機具として使用する、という無駄のなさが幼い私の心にヒットし、私は祖父がいないときでもひとりでシートに腰掛けてハンドルを揺すった。その車もオープンカーである。

それは一体どんな農機だったのだろうと調べたら、テーラーという機械だった。「テーラー 農機」で検索かけると出てきます。