この前 必需品 (id:hitujyuhin) さんが、Twitterで
「ハウアーユーという漫画のあとがきの文章が、fktackに似ている」
とつぶやいていたので、私はネットで調べたら「ハウアーユー」という漫画はひとつしかなかったが、念のため必需品さんに、
「これですか?」
と訊いたら
「そうです」
と言うので買って読むことにした。必需品さんは、
「どこかで見かけたら手に取ってみて」
と言っていたのに、早速購入するのはバカみたいなので黙っていた。しかし、自分の文章を外から読める機会なんてそんなにないので、私は我慢できずに注文したのだった。それに、本屋で本を探すというのは、例えば目的もなく本の背表紙をぶらぶら眺めて、目についた本を手に取る、というのならいいが、最初からこの本、と決めて行くとなかなか見つからずにイライラする。本屋に限らず、最近はホームセンターとか、でかすぎてなかなか目的のものがみつからなくてイライラする。小さいほうがよほど便利だ、といつも思うけど「でも小さいと品揃えイマイチだしなー」と思う。入り口で電極を頭に差し込み、目的のものが気持ちの強い順にばばばーと並んでくれれば、と思う。そうなったら素敵だ。
そういうときのために店員がいるんでしょ、と思った。だけど私は知らない人に話しかけるのが不得意で、ましてや相手も仕事中で忙しそうにしていると悪いな、と思ってしまう。アメリカ人はそういうことを考えないらしい。私の祖母は私の引っ込み思案な性格を、
「意気地がない」
といつもバカにして、私も落ち込んだりもしたが、今はそれでもいいやーと思う。
しかし誰かが一緒だったりすると、難なく話しかけられたりする。私が就職したときには、私は下っ端だったので、まさか
「恥ずかしくて、話しかけられません」
とは言えずに、話しかけたら案外なんてことはなかった。電話もそうだ。午後6時くらいに役員が、「合同会議どうする?」とか話し合っていたときに出し抜けに、
「弓岡、14日空いてるかきいてみ?」
と言われたが、私は嫌な顔ひとつせずに受話器をもつことができた。かけたらおじさんが出て、しかしその人は警備員で、職員はみんな帰ったから予約はできない、という。
「14日に使いたくて、電話したんですよねー」
と世間話風に話すと、警備員は帳面を引っ張り出し、
「大会議室は、空いているみたいですよ、いつも予約入ったらここに書き込むんで。わかんないですけど、たぶん空いてますよ」
と教えてくれた。私は、
「職員がいないんで確実じゃないんですけど、空いてそうです。警備員のおっさんが、「たぶん大丈夫」て言ってました」
と報告すると役員たちは笑った。「警備員のおっさん」のぶぶんを、少し滑稽に発音したのである。
人と話すときにその相手との親しさを測る指標、というか、トーク全体の得手不得手を知る方法に、前もって話す内容を考えるかどうか、前もって考えた内容をどこまで再現するか、というのがある。例えば家族や親しい友人ならば、思った瞬間に口にしていることが多い。「今日のご飯なに?」とか、ものすごい瞬発力できいている。しかし、フライパンを振るのが上司とかなら、「見てわからないの? チャーハンだろ?」などと言われたらたまったものじゃないので、
「お疲れさまです。香ばしい匂いがします。大家族だと、5人前とか平気でつくりますからねー」
と、ジャブを繰り出しながら、距離を詰めていくのである。
この前事務員の女子が、上司に原稿用紙1枚分くらいを立てかけるように一気に報告していたので、まるでセリフをしゃべっているようで、「ああ、この人はしゃべるのが苦手なんだな」と思った。普通なら10字でも20字でも、適当なところで区切って相手の反応を見て、それ以降は相手の理解度を考慮して、話すべき内容をアレンジして伝えていくのである。こうして文字にするといかにも大変だ。
私はしかしながら周りからは社交的で喋るのも得意だと思われているらしく、昨日も
「結婚式じゃ、スピーチとかするんでしょ? しゃべりが上手いから」
なんて言われたので、
「頼まれたってしませんよ。彼は二度目ですから」
と答えた。でも、私は人前で喋るのはそれほど苦にはせず、それはだいたい周りは人が喋っていることなど聞いておらず、だから最後だけ
「まとまりませんが、以上を私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました」
と、少し強めに、ここで拍手しろ、と合図を出して頭を下げるとそれっぽくなるから、難しい話ではない。もちろん仕事でさんざんやらされたから、難しくないと言えてしまうわけだが。
なぜ唐突に結婚式の話が出たかというと、今日はこれから友人の結婚式なのです。バスで向かいます。