意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

懲りない妻

妻が懲りずに私に面白動画を見せてくる。妻は自分が笑えたものは夫である私も爆笑するに違いないと確信している。じっさい私は結構すぐ笑うほうで、それは私の心の弱さがそうさせるのだが、元来面白好きなのである。と、「面白好き」だなんて、まるで世間の人は「つまらな好き」だと小馬鹿にしているように書きながらかんじた。少し前に友達が、
「俺たち旨いもの食うの好きだからさ」
と言っていて、「俺たち」とは彼は結婚していて配偶者がいるからそんな風に言うのだが、言われた私は
「まるで俺たちが日頃は泥を食って暮らしているような言いぐさだな」
と思った。私も結婚しているのである。もちろん私は彼と付き合いが長いから「旨いもの食う」の意味するところがわかっていた。彼は語彙が少ないからこんな言い回しをしてしまうのである。もちろん彼からしたって私との付き合いは長いから、私がなんでもひねくれた解釈をするのはわかっても良さそうだが、彼は元来馬鹿者なのである。「俺たち」と一緒にされてしまった配偶者がかわいそうである。

私の「面白好き」は「彼の旨いもの食うの好き」と似ていると思った。また、あまり関係ないが私の職場に肩が痛くてまともに字が書けないという人がいて、その人はもう15年会社に勤めながら肩を壊したと主張するが、私はその人を影で
「野球選手じゃねーんだから」
も揶揄した。するとそれを聞いた後輩が、
「15年プロでやって肩壊すプロ野球選手もそうはいないですけどね」
と突っ込んだ。まさか会話にそこまで日本プロ野球リテラシーが求められるとは思わず、私は仰天した。私としては「野球選手じゃねーんだから」の時点でオチは完全についたと思い、もうその話は終えるつもりでいた。そこにまさかの肩の消耗率の現実とイメージの乖離について話を放り込まれてしまった。私は野球についてはそこまで詳しくないから、確かに「肩壊す=野球選手」は思うほど一般的ではなかったのかもしれないが、私だってプロのお笑いの人ではないのだから、そんなにシビアにならなくても良いと思う。そもそも不正確なところが笑うポイントだったのだから。