意味をあたえる

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ノルウェイの森感想

休みでノルウェイの森を最後まで読んだ 私がこの小説を初めて読んだのは19歳か20歳のときでその後もちょこちょこ読んだりした気がするがあるときから私は村上春樹断ちをしていたのでものすごく久しぶりに読んだ


印象は違った 若い頃に読んだときは主人公ワタナベが気障(あるいは傲慢)にかんじたが今読むと誠実さをかんじたしときには気の毒に思う場面もあった 私が好きなのは直子が死んだ後に日本中をさまよい歩いてあるとき出くわした若い漁師に「なんで泣いてるんだ?」と訊かれ「母親が死んだから」ととっさに嘘ををつくシーンで好きというか印象に残ったシーンで私は騙されて寿司を食べさせたり四つ折りにした五千円札を渡す漁師に同情をおぼえたがやはりこのシーンもワタナベがかわいそうになった というか大切な人をうしなったという点では嘘ではないのだ しかしその五千円でちゃっかり東京行きの切符を買うワタナベもワタナベなのだが


後半にいくにつれ読むのが苦しくなった レイコさんが若い娘に陥れられるシーンは少し飛ばしながら読んだし直子が死んでからもつらくてレイコさんがワタナベに会いに来てくれるところでホッとすることができた レイコさんとすき焼きを食べてセックスができて良かったねと私は心底思うことができた 昔読んだときは節操のないワタナベに軽蔑すらおぼえたが物語の後半ワタナベはひたすらセックスを我慢させられるのだから「許してやれよ」という気になった


初めて読んだときには直子が死んだシーンで私はショックを受けたが改めて読むとワタナベはその前に緑への愛に気付いてそのことをレイコさんに相談までしていたから直子が死んでラッキーだったのかもしれない 若かった私は直子と結ばれるものと思っていて緑のことはただのお邪魔虫としか思えてなかった 私が一度に両方の異性好きになる話で思いつくのは「生徒諸君」であのときナッキーは岩崎君と沖田君の両方を好きになって悩んだが結局両方愛してるとなった直後に沖田君が落命するのである それでナッキーは岩崎一本に絞るのかというとそういえば続編でも結ばれてなかった気がする でもそれって作者の読者に対する配慮で実際はけろりと生き残ったほうとくっつくと思うが私にはわからない


物語の最後でワタナベは緑に電話をかけるが一体どこからかけているのかわからなくなるという中途半端な終わりをむかえるがそこに私は作者の戸惑いをかんじた