意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

明日から寒いらしい

毎年生きているくせに冬の寒さを忘れる。「この人は寒さはダメだから」と私よりもずっと年上の嘱託の人が私のことをそう同僚に話す。私は私以外の人が暑がりだったり寒がりだったりというのはあまり知らないから私は毎年とても寒そうにしているのだろう。そういえばひとり暑がりの人がいた。その人は50代の女の人で冬でも半袖だ。もちろん外では長袖だし雨が降ればカッパも着るが屋内では半袖なのである。建物は気密性が高いし仕事も重い物を持ち運んだりするから半袖までいかなくてもみんな薄着だ。その人はまた、朝が弱く始業のギリギリに事務所にやってくる。事務所にタイムレコーダーがあるからである。その人はまた、マスクを装着せずにくることがあり、そんなときは口を手で覆いながら気まずそうにやってくるのである。所長がその姿を見て、
ソープ嬢みたいだな」
と言った。私はソープは行ったことがないから知らなかったが、ソープ嬢は口を押さえながら顔写真を取って入り口に並べるそうだ。その人がソープ嬢のときの癖が抜けないから口を手で覆うのかは知らないが、よく見ると耳に赤い小さなピアスをしていて意外と侮れないのである。