ところで今日は妹の誕生日であった。そうは言っても特に会う予定もなく、おめでとうとメールもするつもりもない。妹はとてもクールな性格で、私がそんなメールをしたら気持ち悪がるだろう。しかし、私は帰りの車の中で、私は長い間、妹はとてもクールな人間だと思っていたが、ひょっとしたら私の方がよほどクールかもしれないな、と思った。車は線路を横切る陸橋を通り、そこから下り坂となり、左側には工場地帯が広がっている。最近、数ヶ月前その工場の建物が突然更地になった。解体されていく建物を見るのは楽しかった。更地はしばらくは埃っぽかったが、最近になってコンクリートを打って、都会の学校の校庭のようになった。私は田舎の学校出身なので、コンクリートの校庭を見たのはテレビドラマ、教師ビンビン物語の中であったが、あれで怪我をせずに体育が行えるのか、心配であった。
妹は高校時代演劇部に属していて、原田宗典の劇をやっていた時があり、私もその頃原田宗典の小説を読んでいたので、その時は少し話をした。妹はその時は演劇部を一生懸命やっていたので、対して私は中学の頃から、そういうのがなんだか馬鹿馬鹿しくて、何かに夢中になることもなかったので、そういう人生の方が余程クールなのかもしれないと考えた。しかし私の当時の家族は加えて両親と弟がいたが、家族全員がクール、というか冷たい性格であり、家族同士でも「俺ら冷たいよね」みたいな話をよくした。私たちは家族とは何かみたいな話もよくした。私たちが冷たいというのは、そういう話の中で出てきた話だ。
6月から仕事のやり方が大きく変わり、私はこれに関しては割と冷静に受け止め、冷静、というのはつまり、とりあえずは様子を見ましょう、という問題を先送りにする態度のことで、他の人たちはやれ人を増やせとか、ローテーションを効率よく回すために修理の時間を変えろとか、そんなことを主張したが、私はどうでもいいやと思っていた。血気盛んな先輩のひとりは、先走って外注のドライバーに文句を言って、上司が営業に口出ししないよう釘を刺されてしまった。馬鹿丸出しで、トラックの到着時間について上司に質問をしていて、それは私のすぐそばで行われ、私にも話はよく聞こえたので、私はなにか気の効いたことを言おうと思い、言ってみたが、そうしたら、私が1番わかってないみたいなポジションになって、上司も「そもそもの話をすると……」と入門者向けの話を始めてきた。これは私にとってとても不愉快なことであったが、振り返って見ると、このようなことはよくあった。私が質問をすると、相手には、的を外した質問に聞こえ私がその内容を理解しているのか心配となり、「最初から説明するね」みたいな流れになる。
私はわかり切っていることを1から言われるので、面白くないし、しかし完全に理解をしている自信もないので、遮る勇気も出ないのである。