意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

肝心のこと

堀江貴文氏が何日か前にその他の人と対談を行っている記事があって、私はそれを読んだら、内容としてはたとえば舞台女優になりたいのなら、ただなりたいっていうのだけじゃなく、たとえば演劇部の後輩なんかに声をかけて、近所の公園とか老人ホームとか、そういうところに依頼して自主公演とか開いて、自分たちでチケットとかさばいたらどうか、という内容で、私はこうやって書こうとした途端に、なんだか全くうまくかけなくなってしまい、要するにただ考えるだけでなく、また年齢が若いとか、条件が整わないとかそういう言い訳めいたことをせずに、まずは行動。出来ないのなら、できるところまで、やれるところまで動かなくちゃいけない、という趣旨で、私はおおいにそれに共感し、なんだか突然フットワークが軽くなり、何かやってやろうという気持ちになった。

それからまた数日が経ち、今度は堀江氏の記事を読んだ人の記事で、私はそれを紹介するブログを読んだのだが、それは名のない個人の書いたもので、その人は映画関係の仕事をやりたいと思っているが、学校も休学して関係する会社に勤めたりもしたが、自分の能力が足りないのか、業界の条件(狭き門みたいな)が悪いのか、そういうのが重なって、挫折してしまった。

そうしたらそこからが私にとっては驚きなのだが、その下のコメント欄が堀江貴文氏をはじめ、なんとか株式会社代表とか、株式会社なんとかの代表とか、そういう名だたる人たちのコメントがずらっと並んでいる。私はそのいくつかを読んだが、とても丁寧に答えられており、いわゆるIT業界の有力者というのは、とても親切な人が多いんだなあと感心した。そしてここでも堀江氏は「話にならない」みたいなコメントを書き込み、私はそれにも同意した。

これだけなら話は終わりなのだが、今朝私は車に乗って会社に向かっていたら、今日は本社から偉い人が来る日で、その人は「早起きは三文の徳」みたいな考えの、要するに偉いくせに朝早く来て、周りを困惑させるという人だったので、私はその人自身というよりも、それに追随する人々が鬱陶しいので、少し遅めに行こうと思い、やや遠回りのルートを選んだ。それは以前はメインのルートであったが、1年前かそれくらいに新しい道が開通し、その道の方が早くつくので、変えたのだった。その道の途中には小児科の医院があって、そこは大変な人気のある病院で、朝でも車が何台も連なっていて、大変な人気だな、と私は思いながらいつも通っていた。私もネモちゃんが赤ん坊の頃に熱を出したので連れて行ったら、
「足を冷やしなさい」
と言われ、その通りにしたら下がったが、同居の義母は、温めなきゃいけないと主張するので、私はネモちゃんの足を、物陰でそっと冷やした。

それで、今朝はその小児科の前を通らないルートだったが、そのうちに私は、およそ15年くらい前に、自分がバンドをやっていて、プロを目指していたときのことを思い出した。その頃は月に1回か2回か、あるいはもっとやった月もあって、それはライブの話だが、とにかくライブをやって客をつけなければいけない時期だったが、ちっともつかなかった。

そのライブハウスのブッキング、出演とかのマネージメントをやっていたある会社に、私たちはお世話になっていたのだが、あるときここの社長、社長とは以前も書いたことがあるが、ベンツを乗りまわす、ヤクザのような外見の男である。その社長が、あるとき私たちが練習スタジオから出てきたところを待ち構えていて、その日は夏だったのだが、狭い玄関兼待合のようなところで、私たちは長々と説教をされた。社長はビートルズの大ファンなので、壁には青リンゴが描かれた時計がかけられていて、午後2時とか、そういう時間だった。私の記憶が合っていればそのとき私は人生でいちばん日焼けをしていたときで、その1週間くらい前に伊豆の今井浜に海水浴に行って、がっつり焼いたら、全身の皮がむけ、痒くて仕方がなくてかいたら、床じゅう皮だらけになった。

社長は、
「今のままじゃ絶対プロにはなれない。もっと真剣に頑張らなきゃいけない」
ということを、長い時間をかけて、私たちに説教をした。ところで、私はその頃自分で作った勝手なルールがあり、それは
「他人に頑張れと言われて、頑張ろうとしてはいけない」
というもので、なんの根拠もない言葉だから参考にしてほしくないのだが、説教が終わったあとメンバーに、
「お前、今の社長の話を聞いて、「頑張らなきゃ」とか思ってないよな?」
と聞いたら、よくわからないような反応だった。これも私の勝手な持論だが、こちらは今朝車のなかで思いついたもので、頑張らなきゃダメなものは、頑張ってもダメなのである。それなのになんで「ダメ」と言われないのかについては、その人が金づるになる可能性があるからである。

私たちの場合は、そのあと
「今すぐうちの会社のレッスンを受けろ」
と言われて、全員が、それぞれの楽器のレッスンを受けた。私たちは全員以前よりも演奏がうまくなったが、今考えれば、それがプロになれないことが決定的になった瞬間だった。もちろん無理に勧誘した社長が悪いとかいう意味ではなく、結果が出なかったのはすべて私たちのせいだが、今書きながらそんなことをふと思った。

Abbey Road (Dig)

Abbey Road (Dig)