意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

また壊れた

5月に買ったパソコンが、いつのまにかDVDのドライブが動かなくなっていた。ナミミがジャニーズのCDを入れてーとやってきて判明した。しかし私はそのときはあまり「壊れている」という認識はなくて、むしろ動かないのが仕様、くらいの気持ちでいた。とりあえずデバイスマネージャーを開いたらDVDのところにバツがくれてあって、一応私は、
「んだよ、ちっくしょー」
などとつぶやいたが、それは私の感情というよりも、ナミミに対するアピールだったのではないか。隣に正座していたナミミは、
「じゃ、いいや」
と簡単に諦めた。張り合いがないのである。ジャニーズは、iTunesなどでは売ってないから、聴けなくて困らないのだろうか。だから私は5月にパソコンを買うときに、DVDスーパーマルチドライブがついているものを選んだのだ。私もたまにはレンタル屋に言って、サカナクションエリック・ドルフィーを借りたりするのだ。だけれど、なければないでいいやーとか思ってしまう。奇しくも昨日そういう勢いでappleミュージックに申し込んでしまった。前日に会社で話したときには、
「邦楽はあんまないですよね、邦楽聴くならLINEミュージックのほうがいいと思います」
と言われた。私も言われっぱなしではアレなので、
appleミュージックは、オフラインでも聴けるから、電波にやさしい」
と、3回くらいアピールした。電波にやさしい、というのは、つまり外だとデータ使用量を気にしなきゃだから不便という意味だ。私は専門家ぶって、
「ストリーミングは、日本の携帯事情にそぐわないよ」
なんてうそぶいた。まるで米国ではデータは水と空気と同じようにタダ、とでも言いたげである。

それで昨日申し込んだことを今日さっそく後輩に報告し、私はなんと言っていいのかわからず、
appleミュージック、始めたよ」
なんて、アマチュア無線でも始めたかのような言い方をした。後輩は冷静に、
「トライアルに申し込んだんですか?」
と返してきた。トライアル、という語彙が私の中になくて、私は田舎もののようであった。

話は戻るが、DVDスーパーマルチドライブが壊れたのは、もう一週間か二週間前の話で、昨日になってようやく私は壊れている、という自覚が出てきた。私はどっちみちCD読めないのは困ると思い、電気屋に行って外付けのドライブでも買おうとしたら思ったよりもずっと高くて、それなら前のパソコンのドライブを取り外して変換ケーブルでつなげばいいんじゃないかと調べたら、それもそれで高いから、それでようやく販売元に電話しようという気になった。よく考えたら保証書もあった。電話をしたら、話し中でなかなかつながらず、ようやく出たらちょっと不機嫌そうだったので、話す気がなくなったが話すと、その人はそんなに詳しい人ではないらしく、
「ちょっと待ってください」
と言って、保留にもしなかったから、
「DVD、デバイスマネージャー」
と説明しているのが聞こえた。取り次いだのは、若い人で、この人はいくらか親切そうだった。送料も着払いでいい、と言うから、私はお礼を言った。でも私としては、もうパソコンなんてこりごりだったので、半ギレで、
「じゃあ金返しますよ!」
とかなってもいいなあと思った。5000円あげるから、DVDスーパーマルチドライブは諦めてくれ、というパターンでも良かった。

それでさっき送ってきたのだが、宅配便の受付のひとは二人いて、二人ともパートの中年の女で、どちらも横柄な態度なので、私は驚いた。二人は双子のようにそっくりで、二人とも太っていて背が低い。でも横柄なのは口のききかただけで、話し出すとそれなりに親切で、私のパソコンをラップにくるんで、ぺきぺきと端を折って箱に入れてくれた。やれ、と言われるかと思ったがやってくれた。私も少しは手伝った。私に少し遅れて品のある中年女がやってきたが、もうひとりの態度に、やはり目を白黒させていた。でもその女も女で、黄色いカードだけ持ってきて、あとはお任せ、みたいな態度だったからそれもどうかと思う。私は箱詰めを少し手伝ったから、親切な客だったのではないか。

タイトルのまた壊れた、とは、私は前に使っていたパソコンも二度壊れて販売元に送り返し、そうすると向こうから電子レンジの蓋みたいな緩衝材に挟まれて私のパソコンは戻ってきて、それでテレビごっこをして、ナミミやシキミと遊んだ。一度目がナミミで、二度目がシキミだったかもしれない。最初のパソコンはシキミが生まれる少し前に買った。保証期間は確か三年で、だからテレビごっこをしたのはシキミが三歳になる前、ということだから、遊んだのはナミミなのかもしれない。とにかく二回は壊れた。

そのあと私はiPhone4と5、iPad2を持っていたが、みんな一度ずつ壊れた。iPhoneはボタンが効かなくなる、というよくあるやつだったが、iPadは全体がバーコードみたいなランダムの縦線が入り「ザ・故障」みたいな感じだった。買って1ヶ月くらいで、買ったのは6月だったので、梅雨が空けたくらいで蒸し暑い中、サポートに電話した。

それでも私はそういうことをすぐに忘れてしまうらしく、忘れてはいないのだが、そういうものか、という認識になってしまう。しかし去年の秋に妻の携帯を変える手続きの時に話したら店員に、
「それ呪われてるんじゃないですか?」
と言われて、ようやく「そういやぜんぶ壊れてるな」と思った。

5月のPCもこうして壊れてしまったのだが、今のAndroidの携帯は壊れていないので、このまま使えればいいな、と思う。がんばれ京セラ!!


小説「余生」第28話を公開しました。
余生(28) - 意味を喪う