意味をあたえる

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愛とか強調すると顔が変になるよ

※タイトルはTHE YELLOW MONKEY「プライマル。(吉井和哉 作詞)」からの引用

先週、先々週のクレイジージャーニーでメキシコの麻薬カルテルの取材の様子をやっていたが、私は二回見た。最初はひとりで、次には妻と見たが、二回目のときには、
「ちょっとできすぎてんなー」
と、私は少しシラケた。一度目は感じなかったから、テレビ番組とは、一回勝負みたいな作り方をするのではないか。

以下にシラケた理由を書くが、まずメキシコの麻薬カルテルとは、メキシコ政府に敵対するポジションにあり、私は妻に対し、
暴力団みたいなものだよ」
と説明した。そこまで説明しないと妻は理解できなかった。私は高校時代社会の時間に先生が、
「日本には山口組などがあるが、それらが結集しても、警察のほうが強い」
と言っていたのをまだおぼえていて、だからメキシコの場合はメキシコにおける山口組が警察よりも強いから、むごたらしい現実となっているのだ。だから私はメキシコの現状を、妻よりかは理解していた。

それで、虐げられたメキシコ人たちはどうしたのかと言うと、市民が武装蜂起して自警団となって麻薬カルテルと戦いだしたのである。それで番組に登場した村では麻薬カルテルの支配から逃れることができたのである。

ここまでは良かった。そのままかつての麻薬カルテルのボスが住んでいた豪邸を見学に行き、これはまさしく豪邸といった感じで、私はジャッキー・チェンの映画で似たような建物を見たことがある。あと、ブランキージェットシティの「パンキーバッドヒップ」という歌に出てきそうな建物だった。それで豪邸の二階か三階に行くと、
「しかし、隣にボスが住んでいたらたまったもんじゃないよね」
と話が始まり、カメラは隣の家の屋根を写した。それが貧乏丸出しの小汚い屋根であり、私はそれを見て心が和んだ。妻も汚い屋根を見て笑っていた。

ここまでは良かった。しかしその後そこで銃撃戦があったという話になり、近くの売店にそのときのことを取材してから雲行きが怪しくなった。そこで働いている小太りのおばさんに、自警団はどうかと訊くと、
「答えたくない」
と言う。さらに
カルテルについてどう思うか?」
と問うと、
「どっちのカルテル?」
と言ってのけるのである。私はそれを聞いて、ひやりとした。確かに番組の前半で
「悪の麻薬カルテル、正義の自警団」
とやたらと強調すると思っていたが、それはすべて売店の小太りの女の、
「どっちのカルテル?」
という答えにつなげる為だったのである。その後翌日になって、今度は別の町で、人々に自警団についてどう思うか訊ねてまわるのだが、皆一様に、
「答えたくない」
と言う。さすがにそれはおかしいんじゃないかと私は思った。それなりの人数の人に意見を訊けば、一握りくらいは、
「自警団? カルテルとなにも変わらないよ。最初は期待していたけど、カルテルを追い出したら、同じことをやり出すんだから」
と、ズバリ言う人だっているだろう。例えば顔を隠すとか条件をつけたりして。もし、自警団が町を完全に支配していて監視も行き届いているというのなら逆に、
「自警団最高です。彼らのおかげで町は平和になりました」
と、両手を上げて絶賛する人だっているに違いない。「答えたくない」は答えてはいないのかもしれないが、それが一種の意思表示なのである。私は番組側が意図的に「答えたくない」以外を排除したように思える。なぜなら最初の「どっちのカルテル?」
から、
「正義と思われていた自警団。実は.....?」
みたいな流れができていたからである。だから、その後最初に取材した自警団のメンバーが、警察に逮捕されたのだが、それもなんか出来すぎているような気がして、私はシラケてしまった。最初に逮捕があって、それに合うように番組の流れを決めたような気さえしてきた。

しかし私は最初に書いたように、一度目に見たときはそんなことは思わなかったので、テレビ番組はあまり考えて見ない方がいいのかもしれない。