意味をあたえる

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山下澄人「鳥の会議」

山下澄人「鳥の会議」のなかには、「鳥の会議」という小説と「鳥のらくご」という小説が収録されている。らくごは漢字だったかもしれしないが、今は家なのですぐ近くに本があったので確認したら「らくご」だった。らくごは落語なのかもしれないが、落伍なのかもしれない。

鳥の会議の方は、話の中で、駅のロータリーの木の中に鳥がわーっと入っていくときがあるが、それは会議してるんだよ、と登場人物のひとりが言って、それがタイトルになった。と私は判断した。駅のロータリーではなかったかもしれない。ロータリーとは、私が出かけるときに使う東武東上線という路線の若葉駅のロータリーであり、そこに生えている木に鳥がめちゃくちゃとまっていて、それぞれが思い思いに
「ぴーぴー」
鳴く。それがもうとっくに日が暮れた夜だったから不気味だった。若葉駅はとくに私の家から最寄りというわけではなかったが、若葉駅はとにかく駐車場が安い。しかし駅のすぐそばはそれほど安くないのだが、少し離れたところにある駐車場はほんとうに安い。しかし安いという噂が徐々にしんとうしたため、昼過ぎなんかに出かけるともう満車になって停められなくなる。土曜なんか朝からいっぱいだ。そういうときは駅前の高い方にする。高い方も混んでいるときがあって、前は屋上に停めた。下からいっぱいになるからである。そこから階段を降りてミュージカルを見に浜松町まで出かけたら、昼からぱらぱら雨が降り、私は
「靴が汚れてやだなー」
と思った。天気予報が雨なら、濡れても悔いのない服装をするものだが、東京に行くというのなら、話は別である。これは東京という場所は四六時中雨が降らないという意味ではなく、私がおのぼりさんだからである。しかし私の母の実家は豊島区に今もあり、祖母も90歳を過ぎているが、まだまだ元気だ。この前久しぶりに会ったら
「まだお迎えがこないのよー」
と言っていた。祖母は私が子供のころよりもだいぶ太っていて、いぜんかかりつけの医師に、
「少し甘いものを控えましょう」
と注意されたら、
「なんでこんなババアになってまで、我慢しなきゃいけないんだよ」
と、ブチキレたらしい。老害である。

それで私は子供のころからお婆ちゃんちに遊びに行っていて、しかも私は長男で母は里帰り出産したから出生地も都内だから、私は半分は都会人のつもりでいた。小学四年のときに、担任の小田先生が社会の時間にサンシャイン60の話をしていて、私が行ったことがあると言うと、
サンシャイン60には消火器があるよね?」
と訊かれ、私はサンシャインの消火器の有無なんか確認したことがなかったが、都会人らしく、
「はい」
と答えた。

ミュージカルに一緒に出かけた友達は小学三年まで東京の小学校に通っていて、今見るとどう見ても田舎もの丸出しなのに、本人は都会人ぶるから、私も他人から見たらそんな感じなのだろう。そんなふたりが出かけて帰ってくると、ものすごい量の鳥が駅のロータリーの木という木にびっしり止まり、思い思いに鳴くものだから、場合によっては都会の喧噪のようであり、二人は
「埼玉もまだまだ捨てたもんじゃないな」
と思いながら屋上に停めた車を目指して階段をのぼるのだった。