意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

残暑が暑い

義理の祖母が入院をし、そこに色んな人の感情が絡まり合っている。義父にしろ義母にしろ農村の出であり、一方私の父は同じ地方の出だが、母は東京の出身で、あと関わってきた仕事というかが違うから私の家はあまり土のにおいがしない。結婚して義父母の親戚は誰と会っても独特の、土のようなにおいがした。それは別名中上健次のにおいと言っても良かった。中上健次とか村上龍の小説は読んでいて照りつける日差しのような不快さというか、息苦しさがある。少し前に中上健次千年の愉楽」を読んだが、どうにもこうにもスケベで読むのが途中で嫌になった。実際そんな描写はないが、乾いた女性器に男性器を合わせるような息苦しさが読んでいてある。三度目か四度目の射精のような気だるさがある。もちろん性描写に限らず、である。

それと近いものを義父母に感じる。驚くほど純粋な人たちである。義母の家の近くには被差別部落があり、義父の家はつい何十年か前まで土葬をしていた。土葬をしてしばらくすると、関わった人みんなが左目に違和や痛みを感じるようになり、掘り返してみると死体の左目に木の根っこが食い込んでいる、というようなことがあったそうだ。私は端からそんな話に興味はなく、話半分で聞いていたから、死体を埋める穴がどこかのクレーターのような巨大なものを連想された。戦時中の死体が多すぎてまとめて火葬するみたいなのを想像した。ずっと昔の話だろうと思ったら案外最近の話らしい。義母は被差別部落の人の苗字を教えてくれた。それは確かに珍しい苗字だが、全国的に見ればかなりの数がいそうなものだった。それが全部被差別だとは思えなかった。みたいなことを当時思った。もう忘れてしまった。

一方私の父方のお墓は私の家のすぐそばにあったが、周りの墓の中でいちばんみすぼらしくて囲いも何もなく、幼い私は幼いなりに、
「なにかあるな」
と思っていたが。今は墓も進化して、野球に縁のある人なら野球ボールの墓石が用意されたりする。石材屋も単純な四角ばかりではやっていけないのである。一方私のように「墓なんかいらない」と思う人も増えてきた。最初はそんなことを言うのは私だけだと思ったら最近では妻までそんなことを言うようになり、だから私は
「散骨もかなりの金がかかる。あれは金持ちの道楽みたいなものだ」
なんて言い返している。色んな人に三回か四回言った。私も単純な男なのだ。