意味をあたえる

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叔母

叔母が先週死にこれから通夜へ行く電車の中で書いている。叔母はもう90歳を越えていて正確には大叔母だった。ちょうどプルースト「失われた時をもとめて」を読んでいて大叔父のことを叔父と呼んでいたから倣った。じっさい「おばさん」と呼んでいたが。


私は少年時代落とし穴を掘ることに執心していた時期があり庭の畑に穴を掘ったりして家族がそこへ落ちることを期待したが誰も落ちなかった。私はがっかりしてやがて飽きてしまいカモフラージュ地面をとっぱらって穴だけが残ったがある日その穴に叔母が落ち私は両親に怒られた。当時の叔母がそこまでもうろくしていたとは思えないが私が記憶する限り叔母はずっと白髪だった。姉である祖母は積極的に髪を金や紫に染めていたから対照的だった。むしろ白に染めているようなかんじがした。叔母は私によくお菓子を買ってくれた。その中に私のお気に入りのクッキーがあり私が気に入った旨を伝えると叔母は私が遊びに行く度にそれを用意するようになった。そのクッキーは最初都会にしか売ってなかったがやがて私の地元のスーパーなどでも売るようになりそのパッケージを見る度に叔母を思い出した。昨今色んな菓子類が販売をやめたり販域を縮小したりするがそのクッキーはまだ売っているので叔母のほうが先にいなくなってしまった。