意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

行きは見つかるが帰りは見つからない道

休みの日はよく買い物ついでにだらだらとドライブをするがひとりで車に乗っていれば冷房も暖房もじぶんの好きにできるから楽だ ドライブといっても自分の家の近所をぐるぐる回るだけだが気まぐれで知らない道に入ったりする 私は元来方向音痴というか熱心に出かけるタイプではなかったので近所でも知らない道がたくさんある 若いころ友達の車に乗っていたら知らない道に入って友達はわくわくしている風だった やがてどこか見覚えのある地点に出たのか
「ここに出るのかー」
と満足そうであった RPGであればレベルがあがった瞬間というかんじである 私も稀に知らない道が不意に知っている道につながることもあるが「へえ」というかんじで何の感動もない というか行き止まりにならなくて安堵する 知らない道に入ると道がなくなることがよくある 妻を隣に乗せているときはよく
「どうしてそんな細い道に入るんだ」
と呆れられた 確かに大通りのほうが表示などもあってわからなくても見当がつけられるから私も細い道は避けたいのだがそれでも自分の意志通りにならない 今日も普通の交差点だと思って曲がったらすぐにセンターラインが消え少し田んぼの中を走ったら集落に入って気を抜くと人の敷地に入りそうでひやひやした 適当なところで諦めてナビを起動したらすぐに止まれがあってセンターラインの道に復帰できた


そもそも私は来た道を反対向きに戻ろうとしていて来たときは堤防の上を越え越えたところに二階建てのビルがあって私はひょっとしたらその建物に来たとことがあるのではないかと疑っていた 来たのは小学校のころで悪友に誘われて鉄条網をくぐって忍び込んだのである びびりだった私は柵の外に出たくて仕方がなかったが悪友は悪だったので許してくれなかった 私は私有地に入るのも怖かったが悪友も怖かったのである なぜそこに入ったのかというと中に池があってそこで魚が釣れたからである 当然人がいないときに忍び込むので一体何のための施設と池なのかそのときも今も知らなかった 悪友は知っていたのかもしれない 池も相当深かったらしいし私はそもそも釣りなんてそんな好きじゃなかったので言われない限りは池にも近づかなかった 悪友が釣りに興じ出すと私はそこをそっと離れ建物の周りをぐるぐる回ったりした 周りは田んぼで何もなかった 裏側には枯れた雑草が生えていて私は「鹿でもいそうな景色だな」と思った


いつからかそこへ行くこともなくなって建物の行き方も完全に忘れてしまった 悪友も小学校を卒業するころには口もきかなくなった 大人になってふとそこに行って一体何の施設だったのか確かめたかったがアタリをつけた場所はことごとく空振りだった ひょっとしたらあれは夢だったのかもしれないと考えるくらいに私は今でも夢見がちだった


ところで昨日家に帰ると妻がいなくて焦った 子供たちは私の実家にいて仕事帰りにそっちに行ったら妻は家に一度帰ったから迎えに行くように指示を受け帰ったら妻の車だけ乗り捨てるように停めてあって家の中は空だった 妻の携帯に電話すると子供が出て「トイレにでもこもってるんじゃないか」と笑われたがトイレにもいなかった 私はひょっとしてどこかの部屋で死んでるんじゃないかと気が気でなくなりつつ全部の部屋を探したがいない 物陰に強盗でも隠れてるんじゃないかとヒヤヒヤした 結局いないのでこれはこれで不気味だと思ったところで義母の電話で妻がかけてきて所在を伝えてきた


今日通った道にここがそうでは? という建物があったが何故かパトカーが停まっていたので近くまで行くのは諦めた もう一度逆方向に通ろうとしたら道に迷った