意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

親の中の私

私の母と私の妻が私の性格について話していて母が私のことを「無口でシャイな性格」ととらえていて愕然とした 私は確かに子供時代は引っ込み思案な性格であったがその一方で冗談を言うことが好きだったし人の注意を引きたい性格でもあった 年を重ねるごとにおしゃべりが上手くなったし最近では人の話もいくらかは聞けるようにもなった 家族の前で特別にむっつりしていた時期もなくはないがそれは短く何より私は親への反抗期がなかった それは親が私の前に立ちはだからなかったことと私が親へ劣等感を抱いていたからであった だから私は親に対してもそれなりにおしゃべりをしてきたつもりだった


私が思うに私の両親はおしゃべり担当は私の弟だと思いこんでいるのである 弟は幼いころから茶目っ気があり社交的な性格だった 小学校のイベントでは親のいる前で白紙の原稿を読むというタモリみたいなことをしたし中学の運動会では打ち上げを開いて酔いつぶれて友人の親に送り届けられるという事件まで引き起こした 後者については叱責は受けたものの大人たちは弟を「豪気な若者」と評していた 


私は当然そんな弟に嫉妬心を抱いていた 私は幼い弟に父が「将来大物になるだろう」と言っていたことを今でも忘れずにいる しかしだからと言って両親は私を蔑んだわけではないし何より弟自身が私を認めてくれた 自分の数多い友人には私のことをかなり好意的に話してくれているようだし「トーク力では兄の方が上」と言ってくれたこともある 私自身も十代の頃こそ自意識が買ってしまっていたが就職すると一部の人は私をかわいがってくれ人付き合いについては自信を持つことができた 今更弟に対して何を思うこともなかった


しかし母に「無口」と言われたときいっぺんに過去の感情がよみがえってしまった 私は試しに弟に認められていることを言ってみたがそれは真面目な話のときじゃない? と言われ私もそれ以上主張するのもムキになっていると思われそうなので「そうかもね」と引き下がった 考えてみたら私が人前で話したり友達とバカ騒ぎしたり上司に軽口を叩いている姿を両親は見たことがないのである 両親の中で私は今でも無骨で不器用で自己主張が苦手な人なのだろう 老いた両親の認識を変える機会はおそらくないだろう 私は少しだけ親に悪いことをしたような気がする