意味をあたえる

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鳥貴族

家へ帰る途中鳥貴族の横を通りがかると窓越しに男がサーベルを振り回している。私はバスに乗っていたからそんなに長い時間見られたわけではないが、やはり貴族だから決闘でもしてんのかなと思った。私は少し前まで大聖堂という小説を読んでいたから中世の貴族というものがどんなものかよく知っているのである。政治的な細々したことは省略するが貴族は相手の城を乗っ取れば伯爵になれるのである。私の感覚からすると不思議な感じがする。例えば私が市役所に入り込んで市長を倒して自分が新市長を名乗っても誰も歓迎しないし警察に逮捕されるのがオチである。つまり中世には警察は当然いないし警察に替わるものがあったとしても貴族の抱える兵隊の方がずっと強いのである。高校のときの社会の先生が「警察は山口組のヤクザより全然強い」と教えてくれたのを思い出す。例外はあれど警察が強いのがスタンダードなのが現代なのである。しかしこのパワーバランスは1000年前には発想すらなかったのだろう。


鳥貴族の貴族が振り回していたのは焼き鳥の串であった。よくよく見ると根元にまだ肉片が残っている。相手はよく見えないがとても楽しそうでそのうちサーベルではなく指揮棒に見えてきた。私も焼き鳥を食べるときあんなに串を振り回すのだろうか。電車に乗っていると缶チューハイを飲んでいる人が何人かいた。暖かくなったからだろうか。花がまだ咲かないせいかキャップをかぶった酔っ払いが人の顔ばかりをじろじろ見ていた。