意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

ザ・SE

ザ・SEみたいな人がやってきた。私の職場を見たいという。もちろんその人も偉い人の指示でやってきたのだ。私の職場は年じゅうそんな人がやってくる。そして「指示してください」みたいな顔をしながらスタンドプレーを好む。意識が高いというか空気が読めないというか。空気を読まないのが流行なのだろう。今日のSEは違った。無地のトレーナーにメガネをかけ、メモはもちろんタイピングでとる。もちろん使うのは「.txt」である。そして言われたことのみやり切った。とちゅうで上着を脱いだので私が預かった。びっくりするくらい軽いジャケットで流石だと思った。費用対効果が抜群なのである。


私はとちゅうで外出し、やがて戻ってくると上司がぷりぷりしていた。この人は普段は穏やかだがハンドルを握るとぷりぷりしやすくなる。特にハンドルを持て余しているわけではなかったが、隣の所長といざこざがあったらしい。この所長というのが女で前に私の職場にやってきたことがあったが自分の部下まで引き連れて見事にスタンドプレーをやってのけた。私は強制的に裏方にまわされ、ただ苦笑をするしかなかった。そういえばこの人はショートカットで細身で白いタートルネックのセーターに群青のチェスターコートが似合いそうだ。そのコートは防寒効果の割に重いのだろう。


夕方に決着がつき、向こうから謝罪のメールがきたが、何故か「ご迷惑をおかけしました」の文面だけフォントが違っていて不気味だった。ネガティブな言葉は直打ちせずにコピペすると幸せが逃げないというアレだろうか。やはりフォントに左右されない「.txt」は謝罪もスマートに行えて優れている。ザ・SEがその後どこへ行くのかはわからない。たぶん二度と会えないだろう。その後私たちはフォントでデトックス教の女の悪口をひとしきり言ってから帰った。