意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

蛇の目

子供の入学式に出席した。式が終わって子供が教室へはけると蛇の目の女が出てきた。これからクラスの役員を決めようと言うのである。私はこの女の目にすっかり縮みあがってしまった。みんなで揃いのウィンドブレーカーを羽織っているが、とても仲良しさも和やかさも伝わってこない。さきほど挨拶した会長も心なしか表情がこわばっている。蛇の目の女が牛耳っているのは明らかである。


ここからグループごとに割り当てられた教室に各自向かうのだが、とにかく指示が複雑かつ難解で参ってしまった。トイレに行きたい人は申告しなければならず、トイレに行きたくない人はその場に待機しなければならない。男と女で申告する係が違う。勝手な行動をとると必ず迷うからと注意され緊張感が一気に増した。私は「ショーシャンクの空に」を思い出した。残された私は最後に体育館を出て「実験室」と表札が掲げられた部屋で待機することになった。もちろんナチの実験室ではないだろう。中庭に差す春の光がまぶしく見える。


するといきなり蛇の目の女が部屋に飛び込んできて
「ナガシマさんの保護者の方、いらっしゃいますか?」
と訊いてきた。私は「脱走者が出たか」と思った。ナガシマさんは見つかり次第中庭で銃殺刑に処されるのかもしれない。