意味をあたえる

文章としかいいようがない fktack@yahoo.co.jp

死について2020

月に一度くらいは死ぬのが怖いと思うが、だんだんとある日突然死ぬことになってもそれは仕方ないと思うようになってきた。私には子供がいて、残された子供の心情を察すると気が滅入るが、それでも子供に死なれるより、自分が死ぬ方がずっと楽に思える。死ぬ…

正月は心ここにあらず

正月も毎年変わり映えしないから飽きてしまった。私は今年は厄年だというので、厄払いをすすめられたが、馬鹿馬鹿しいので断った。それは趣味の問題だと思うから私以外の人が「厄払いせねば!」と意気込むのはいいと思う。お互い干渉しないのがいちばんであ…

読まれるかもしれない

カクヨムで小説を書くようになった。そこには読者が二人いて、二人というのは現実の顔見知りの二人でネット上で読む人はいるのかもしれない。とにかく私の書くスタイルはそういう形になった。感想というのはとにかく自分の言ってもらいたいことを待つだけで…

歩道橋(10)

環さんと4日目から連絡がとれなくなった。課長には音信不通の件は伏せ、「風邪をこじらせたようだ」とだけ伝えた。課長は環さんが誰だか、あまりわかっていないようだった。人が多すぎて誰が誰だかわからないのだ。従業員は50人いて、稼働当初予定していた人…

歩道橋(9)

「あなたもよく知っているとおり、Nはわたしの元教え子です。教えていたころは高校生で、大学進学が決まってから、わたしたちと一緒に遊ぶようになりました。講師が元教え子を連れてくることはよくある話です。おかげでグループはどんどん大きくなりましたが…

歩道橋(8)

Nとは人の名前でもちろん由真のメールでは名前が記載されているが、小説に載せる際に私が置き換えた。イニシャルではなく、記号である。Nがどんな人物なのかについて、もちろん私はよく知っているが、この場での説明は控え、由真の話を待ちたいと思う。 由真…

歩道橋(7)

「福園さん返信ありがとうございます。そうですね、「ノルウェイの森」をわたしが借りたとき、わたしはマレーシアに短期留学することになっていました。当時のゼミの先生の知り合いの家に、ホームステイすることになったのです。飛行機で移動中の暇つぶしが…

歩道橋(6)

「夏になってわたしは福園さんと2人で飲みに行きました。夕方6時に駅で待ち合わせました。わたしは学校帰りで、あなたは家から自転車でやって来ました。イトーヨーカ堂の前の、ゲームセンターの2階の居酒屋だったと記憶します。薄暗くて店内にデジタルジュー…

歩道橋(5)

由真のメールを受け取った週末、会社の送別会があった。辞めるのはパートさんで、半年勤めた人だった。環さんも参加していたので、チャンスがあれば由真のメールについて話がしたかった。メールは昨日公開したから、まだ読んでいないかもしれない。LINEで通…

歩道橋(4)

「福園さん、こんにちわ。返信ありがとうございます。実はこの数日、あなたから連絡くるのかドキドキしていました。来なきゃそれはそれでいい、と思って出したくせに、どこかで期待しちゃうものなんですね。 わたしのメールを小説に掲載する件、了承しました…

変わるとか変わらないとか

彼氏に大事にされないのが嫌だ(追記しました)珍しくあまり同調できるコメントがなかった。一緒に行くとが同じ趣味を持つとか、あとは諦めるとかそれはもう一歩先の話だと思う。別れるとか論外。まずは自分が快く思っていないこと、寂しいことを伝えるべきだ…

歩道橋(3)

由真のメールは翌日の昼休みに読んだ。工場は人数が多いので昼休みは2交代制で、12時の人と13時の人がいる。私はどちらでも良かったので、中途半端になってしまうことが多かった。午前中は毎日課長とのミーティングでつぶれ、それが長引くと14時からお昼とい…

歩道橋(2)

由真のメールは夜遅くにきた。気づいたのは翌日の昼過ぎでさまざまな宣伝のメールを削除していた中に由真のメールは埋もれていた。最初は迷惑メールかと思い、どこかに誤タップをねらったURLがあるのではないかと警戒したが、そういうものはなかった。「あな…

歩道橋(1)

新しい職場に来てもうすぐ2年が経つ。そこは新設された工場で、私はそこの現場監督として赴任した。国道17号線沿いにあって上空を覆い被さるように首都高が走っている。そばに大きな歩道橋がかかっていて私は毎朝そこを渡って通っている。工場側がS区の4丁目…

音楽室(私と先生)

「音楽室」は7年前に書いた小説で、最終話だけ書き下ろしである。「十字路」と同じ頃に書いたがそれと比べると今回の掲載にあたって手を入れた箇所は圧倒的に少なかった。理由のひとつとして主人公の性別の違いがあって、男性が主人公の場合私と同じだから気…

音楽室(16)

下駄箱を確認すると全くの空っぽで、音楽部が使っている様子はない。そもそも練習は何曜日だっけ? 空っぽということはタヤマ先生も不在ということになるが、先生は靴を脱がずに、いつもそのまま中に入っていた。思い出した。靴ではなくてスリッパだった。服…

音楽室(15)

年が明けて駅のそばの、市内の1番大きな神社で初詣をした。愛華の家からは自転車で20分かかり、こんなところまで初詣に来るのは初めてだった。例年なら家族とともに、近所の小さな神社に行く。区長たちが、ドラム缶に角材を突っ込み、それに火をつけて暖をと…

音楽室(14)

夏休み前半は3人がなかなか揃わなかったが、芳賀くんのバスケ部も今井さんの陸上部も早々に大会で敗退し、お盆の前辺りから3人で会えるようになった。塾の講習は夕方からだったので、昼過ぎに図書館に集合しそこで宿題をすませた。 愛華としてはできるだけ今…

音楽室(13)

3年になると、今井さんがメインの友達になった。今井さんは陸上部だから、いつも一緒に帰れるわけではなかったが、生徒会のある日はお互いに待ち合わせをして帰る。クラスでは特定のグループと仲良くしたりしないが、今井さんとは常に一緒だ。 今井さんとい…

音楽室(12)

合唱コンクールが終わると、誰が宣言したわけでもないのに金曜の5時間目の学活が、選挙への準備の時間となった。それぞれ担当を決め、タスキやノボリを作ったり、演説のスケジュールを決めたりする。愛華は演説の内容を考え、明日の朝に発表しなければならな…

音楽室(11)

芳賀くんに生徒会を誘われたのは、合唱コンクール本番の1週間前で、4時間目の後、給食当番で小サイズの食缶を1人で運んでいる時だった。中身はコロッケだから、そこまで慎重になる必要はない。そんな時、トイレ帰りを装った芳賀くんに、斜め後ろから声をかけ…

音楽室(10)

職員室の前まで来て全員の足が止まる。ドアを開けるのには心の準備がいるし、誰が代表で話をするかも決めていなかった。前田くん1人に謝罪の言葉を述べさせるのは無茶な気がするし、30人余りで乗り込んでも、タヤマ先生の前に全員が並べるわけもない。誰かが…

音楽室(9)

体育祭が終わるとすぐに、合唱コンクールの練習が始まる。全学年のクラスがそれぞれ課題曲を選び、近くの市民文化ホールを借り切って歌って順位をつけて思い出の1ページとなる。ここまでする学校は、他にはないらしい。うんざりした顔でタヤマ先生が教えてく…

音楽室(8)

予行練習の時にも姿を見せなかったタヤマ先生だったが、体育祭当日になると、観念したように本部テント脇に他の教師と並んだ。愛華は、当日タヤマ先生がどんな格好をしてくるのか楽しみだった。なんせ普段は黒か紺のスカートに白やグレーのブラウスしか着な…

音楽室(7)

佐藤さんたちとのメールのやり取りは、夕ご飯を食べ終わったあたりから本格化する。しかしここであまり盛り上がってしまうと、お風呂に入るタイミングを逃してしまい、お母さんの怒鳴り声を聞くはめになる。それも鬱陶しいので、最近では食事を済ませたら速…

音楽室(6)

2学期になって改めてクラスの係を決める時になると、音楽係に立候補する者は愛華以外いなかった。1学期の時は定員2名に4人も手を挙げたのに、今やすっかり不人気の係となってしまった。おかげで愛華は悠々と黒板に自分の名前を書くことができた。1学期の時も…

音楽室(5)

芳賀くんとは2年で同じクラスになり、進級してわずか1週間でそのことをタヤマ先生に話してしまった。「新しいクラスにいい人いた?」という問いに、まず最初に彼の名前が浮かんだ。単に目に留まっただけの存在だから「特にいない」と答えればよかったが、し…

音楽室(4)

「その芝生田って子はね、この前一家揃って夜逃げしちゃって行方不明なの。そんで、どうしようかって話。まあ退学にするんだけど」先生がぽつりと言った。てっきり書類を綴じるのに夢中になっていると思ったのに。愛華は一気に血の気が引いて、思わずその場…

音楽室(3)

後から友達に聞くと、それは2年の音楽を担当しているタヤマ先生だと教えてくれた。なんとなくひと言くらいはお礼を言った方がいいかと思ったが、わざわざ職員室まで出向く気にはなれない。話しているところを誰かに見られて、何を話していたのか聞かれるのも…

音楽室(2)

門を出て右に曲がり、校庭に沿って歩く。垣根が植えられているが、葉っぱはすかすかで中の様子がよく見える。すぐそこは野球部、その向こうはサッカー部。陸上部はそのさらに向こうだ。芳賀くんはバスケ部だからこの中にはいない。掛け声や金属音が至る所か…